木×葉っぱ
おしべ、というのはみじめなものだと思う。
どんなに素晴らしい種を持っていても、実になれるのはめしべだけだ。
自分の種を受けた相手が実になっていく横で、寂しく枯れていかなければならない。
体が黄色くかさかさになり、落ちるのを一人待つだけ。
土に落ちれば、あとは腐るだけだ。
「・・・それでは」
だから俺は喜ぶべきなのかもしれない。自分が葉であったことを。
「ああ、じゃあな」
木に栄養を与えた後は、用済みになって落とされる。
葉もおしべも、用済みになれば木にとっては同じだ。
一生で幾度も出会うもののたった一つに過ぎない。
それでもまだ。
俺は足元に落ちたあいつとは違う。風に乗って、遠く離れていけるのだ。
木のように、次々と新たな命を生み出すあの人から。
この箱庭のような王宮から。
最終更新:2014年12月10日 22:01