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うたた寝をしているあいつが無防備すぎて・・・


「嘘だろ…」
あまりにも返事が返ってこないのは、今流れている映画の退屈さのせいだと思っていた。
それでも適当な感想を口にしながら、ふと寝転んでいる八坂の顔に目を向ければ、
とうの昔に睡魔に負けて寝入ってるようだった。
昼過ぎに有料チャンネルでライブを見たいと家に押しかけてきて、
朝4時から始まるみたいだから、それまでお前も起きてろよと勝手にいいつけて、
ゲームして、持ち寄られた夕食を食べて、適当にテレビを見て、場つなぎににさして興味のない映画を流して。
持ちかけたのは、全部こいつのはずだったのに。
「八坂くん最低ー、引くわー」
鼻をつまんでも、頬を押してみても、つまんでみても、一向に目を覚ます気配はない。
「何しても起きねーな、こいつ」
呆れに、わずかなくすぐったさを込めて笑う。
穏やかな寝息と、時計の音と、退屈な映画と。
そうして静かさを意識すると、無防備にさらされた首筋や、わずかに呼吸の漏れる口元に視線が向く。
ふと気を抜くと、どうにかしてしまいそうだった。
「ほんと、何しても起きねーよなぁー……」
いたずらがしたい。
気付かれたら、もうこんなふうに気楽に遊びに来るようなことも、俺の前で寝こけることもなくなるような。
何度も湧きあがる不埒なイメージを必死で振り払う。
でもせめて。
震える手が耳元をかすめたときに少し身じろいだけど、それでも起きる様子はなかった。
そっと、硬めの髪に触れる。明るい色が八坂に似合って、普段なら冗談でも触れる場所ではなかった。
頭を緩やかに撫ぜるたびに際限なく愛おしさが募っていく。
毛先をつまんで擦れば、まるで自分の心がそうされたかのようにさざめいた。
どうしようもなく幸せだ。だけど、同じくらい寂しい。
この時間や手に触れるもの全部、本当に、
「俺のもんだったらいいのにな……」
呟いて、気持ちをなんとか“友達”に切り替える。
何度か強くに体を揺すって、やっと八坂はだるそうに身を起こした。
「もう始まるぞこの野郎。いい夢見たか?」
「んー? どうしようもないヘタレの夢なら見たよ」
「さすがに次寝たときは起こさねえぞ」
「いいよ。別に」