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寂しがりや


暗い部屋の中、何気なく目を覚ました。
白くぼんやりした塊を見つけ、俺はそっと手を伸ばす。温かい温もりにほっとして、塊にすり寄った。
「くすぐったい」
塊が声を上げる。
起き抜けだからか、酷く声が荒れていて他人のもののように思えた。
「寒い」
「知らねえよ、離れろ」
「いやだ」
面倒臭そうに、俺を突き放そうとする塊に、ワザとくっついてみた。
心音が心地よく、また目蓋がトロトロと落ちてくる。髪を撫でる感触がこれまた絶妙で、すがりついた腕に力がこもった。
「寒いんだよ」
「そうか」
呆れたようなため息なのに、背に回った腕がしっかりと抱きしめ返してくれたことに、俺は安堵した。
どうせ、明日には離れるんだ、今くらいは甘やかして欲しい。
「本州の端と端は、遠いんだよ」
「電子機器は距離を縮めるだろ」
「俺は直に触りたい派なんだよ」
「そこは、声聞けるだけで満足派になれ」
「声聞いて、お前は俺に会いたくないのか?」
自分の声に、意識が引き上げられた。ほんの少し、目の前の温もりが遠のく。
目元をなぞられ、俺は必死にしがみついた。
寒い。とても寒い。
空調がきいているはずの室内なのに、目の前の相手以外、みな、冷たい。
「お前、寂しいのが自分一人だけ……なんて酔ってないよな?」
「悪いかよ」
「別に」
後頭部に回った手が、俺と相手の顔を近づける。
形よく、薄い唇が何か呟くと同時に口付けられた。

「忘れてた、俺も直に触りたい派だったよ」