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恐い話


480です。最初、松田視点で書いていたので一応投下します。更に下品&恐い話からかけ離れてますがご了承下さい。


 不器用な俺に対しても笑顔でいてくれる藤岡のことがすきだった。このことに嘘偽りはない。なぜなら、そう、藤岡の意外な一面を知っても気持ちは変わらなかったのだから。

「あー、萌えるー」
「藤岡、もういいだろ。そんな話をするためにいちいち呼ぶな」
「だって、こんな話できるのお前しかいないんだもん」
「もんって言うな。気持ち悪い」
 図書室で藤岡を見つけた。たしか藤岡の前に座る男は藤岡の同室者兼幼なじみだったはずだ。仲は悪くないみたいだが、クラスが違うので一緒にいるのは珍しい。それに、藤岡のあの浮かれ具合。今まで見たことがない。
 話が気になったので、本棚の後ろに隠れた。怪しいのは百も承知だ。本を読むふりをしてこっそり二人の会話を聞く。
「はあ、早くビーエルの良さに気づけばいいのに」
「恐いこと言うな。たたでさえ怪物を相手してんのに、そんなことになったら精神消耗してすぐハゲちまう」
「あ、ハゲコンプレックスの攻め、悪くないよ。卑屈になりながら受けにほだされていくとか」
「考えたくない」
 呆れた同室者の言葉を最後に藤岡たちは教室に戻っていった。
 俺は会話から飛び出す聞き慣れない言葉のオンパレードに混乱していた。ビーエルとか攻めとか受けとか、意味が分からない。
 それに、藤岡の雰囲気が違うことも気になった。もしかしてあれが本当の藤岡なのか?

 ビーエル、受け、攻めの意味を検索してみて理解した。藤岡は腐男子というものなのかもしれない。
 思い返せば、友人たちのじゃれあいをガン見していた気がする。
 それでも、俺はまだ藤岡が腐男子であることに確信を持てないでいた。俺の早とちりかもしれないからだ。
 ちゃんと確かめたい。そう思った次の日、チャンスがおとずれた。先輩と藤岡が勉強会を開くというのだ。これに乗らない手はない。俺は参加を希望した。

 勉強ははかどり、きりのいいところで藤岡が休憩を提案した。藤岡がジュースを取りに行っている間、先輩と二人きりになる。
 藤岡が先輩になついていることが悔しくて、先輩には普段から素っ気なく接している。だから気まずい。むこうもきょろきょろと部屋を観察している。
「藤岡って、自慰しないのか?」
 ぽつりとつぶやいた先輩の言葉にぎょっとした。何言ってんだこの人は。藤岡だって男なんだから自慰ぐらいするだろう……する、よな?
 考えているうちに藤岡が戻ってきて、先輩が藤岡の性事情について聞き始めた。そしてなぜか体位について教えることになりつつある。いや、さすがにそれは見過ごせないだろ。
 俺は先輩の襟首を引っ張った。
「なにすんだよ」
「藤岡を巻き込まないで下さい」
 床につき倒す。足をつかんで左右に開いたら、その間に身体を滑り込ませた。
「ままま松田、なにして」
「藤岡、これが正常位だ」
 藤岡を見ると、大きな目を見開いていて、キラキラと瞳を輝かせていた。
 やっぱり、そうなのか? 更なる確信を得るために、俺は腰を振って先輩の股間にとんとんと当ててみた。布越しだというのに先輩は軽くパニックになっている。
 バックが分からないという藤岡ーーそれも本当か分からないがーーに応えるため、俺は先輩をひっくり返して腰を持ち上げた。俺に向けて尻をつき出すことになる。
「バックは、こう」
「やめろおおお!」
 さすがに恥ずかしいのか、先輩は逃げるように前へ這っていこうとする。冗談の延長線なのだからそこまで嫌がらなくても。
 いらっとしかけたが、色白の耳が真っ赤になっていることに気づく。なんだ、意外に可愛いところもあるじゃないか。
 気を良くした俺は先輩の上から覆い被さった。交尾するみたいになる。体に触れて気づく。この人、体温が高い。背中が少し汗ばんでいる。それに、なんかいい香りがするし。香水か?
 襟首に鼻を近づけてくんくんと嗅いでみる。
「んん、ちょっと、あ、松田、やめろ。くすぐったい」
「先輩、香水つけてます?」
 聞くと、腕に顔を埋めたまま首を横にふった。なるほど。じゃあ、体臭か洗剤の香りだな。
 香りに誘われて背中にも鼻を当て、匂いを嗅ぐ。先輩はぴくんと小さく体を跳ねさせ、身動ぎをし始めた。
  あの、尻が股間にぐりぐり擦れてるんですけど。この人、加虐心を煽るの上手くないか?

「とりあえず……こんな感じだ」
 先輩から体を離して、藤岡を見た。無表情だった。真剣にこちらを見ている。いや、その顔まじで恐いから。
「藤岡」
 声をかけると、はっとして、いつものにっこり顔に戻った。
「あ、うん。すごく分かりやすかったよ。なんか、バックってすごくえっちだね。ドキドキしちゃった」
 あの無表情がドキドキしている人間の顔なのかは甚だ疑問だが、とりあえず藤岡が腐男子であることは確定した気がする。
 それでも、藤岡なことを嫌う気にはならなかった。
「先輩、大丈夫ですか」
 床に突っ伏している先輩は、魂が抜けたようだった。
「オボエテロヨ」
「それ、負け犬が去っていくときの捨て台詞ですよね」
「後輩のくせに……可愛くねえ」
「そうですか。でも先輩は先輩のくせに面白かったですよ」
「馬鹿にするな。もう二度とこんなことするなよ」
「え、先輩、騎乗位が残ってます!」
 すかさず藤岡が割り込んできた。さすがというべきか、今だからわかるがちゃっかりしている。
 返事は返ってこなかった。ただ、うううと唸り声を出している。しばらくの間、先輩は床に倒れていたので、藤岡と目が合うたびに苦笑いした。

 帰りにて、上機嫌な藤岡の部屋を出たあと、魂が戻ってきた様子の先輩は俺に言った。
「きょっ、今日のことは、他のやつに言うなよ!」
「はい。そんなのわざわざ言いません」
「じゃあ、約束しろ」
「分かりました。ただし、先輩も約束してくださいよ」
「約束?」
 怪訝な顔をする先輩の腕を引っ張って、耳もとに唇をよせた。俺の好きな香りが鼻をくすぐる。
「藤岡のために、ちゃんと上、のって下さいね」