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恐い話


 可愛がっている後輩の藤岡が勉強を教えて欲しいというのでオーケーを出したら、その会話を聞いていた余計なものまで付いてきた。
「藤岡の部屋、綺麗だな。マメに掃除してんの?」
「まあ、気が向いたときに」
「男子寮でこんなに綺麗なのは珍しいだろうな」
「そうなの?」
 きょとんとした顔で首をかしげた藤岡に、余計なものーー後輩の松田はうなずいた。
 凛々しい顔立ちをしている松田だが、俺は疑っている。藤岡と穏やかに話しているが、実はむっつりで内心デレデレだということを。
「おい、勉強するんだろ」
 しびれを切らした俺は、筆記用具を出してテーブルをとんとん叩いた。
 藤岡は慌てて準備をし始めたが、松田は俺を見てふんと鼻で笑いやがった。おいこらてめえ、先輩なめてんのか。
 こんな感じで、勉強会が始まった。

「一度、休憩しまさんか」
 切りのいいところまで解き終わると、藤岡が言った。
「そうだな。藤岡も松田も飲み込みが速くてだいぶ進んだし」
「僕たち飲み込み速いですか? なら、良かったです。やったね、松田くん」
 藤岡は幼い子供のようにふにゃりと笑った。松田は黙ってうなずくだけだ。ほんと可愛くないな。
「ジュースいれてきますね」
 藤岡は台所へ消えていった。松田と二人きりになる。話すことがないので、藤岡の部屋を観察することにした。物が整理整頓されて綺麗だ。ゴミ箱にティッシュの山もなくエロ本も無さそう。
「藤岡って、自慰しないのか?」
 自然と浮かんだ疑問を口に出すと、松田はぎょっとして俺を見た。なんだよ。
「オレンジジュースで良かったですか」
 藤岡がお盆にジュースを乗っけて戻ってきた。
「ああ、ありがと。なあ、藤岡、お前ってセックスとかそういうの興味あんの?」
「え」
「いや、なんとなくエロ本もAVも見てなさそうだから」
「それは……」
 みるみるうちに真っ赤になっていく藤岡の顔。噴火しそうだ。
「あの、きょ、興味ないわけじゃないです。恥ずかしいだけで」
「男なんだから恥ずかしがることないよ。普通にバックからしたいとか騎乗位最高だろうなとか考えるし」
「バック? 騎乗位?」
「あれ、分かんない?」
 まさかここまで純粋培養されているとは思わなかった。
「どうやるか教えてあげようか」
 ちょうど勉強会だから、と言って藤岡の手首を握ろうとしたら、さっきまで黙っていた松田が怒った表情で俺の襟首を引っ張った。
「何すんだよ」
「藤岡を巻き込まないで下さい」
 そう言って、松田はあろうことか俺を仰向けにつき倒すと足を左右に開いて持ち上げた。その間に身体をいれてくる。
「ままま松田、なにして」
「藤岡、これが正常位だ」
 動揺している俺を無視して眉間に皺を寄せたまま説明した松田は、さらにあり得ないことをやらかした。腰を前後に動かしてとんとんと俺の下半身にあててくる。
「ぎゃあああああ!」
「こうやって出し入れする」
 なにが、こうやって出し入れする、キリッ、だ。ふざけんじゃねえ!
 しかし心のおれた俺に更なる追いうちをかけたのは、藤岡だった。
「へえ! 体位にそれぞれ名前があるんだね。実際に見せてもらうと勉強になるなあ。じゃあ、バックと騎乗位はどうやるの?」
 あ、あれ? 藤岡? さっきまで真っ赤になって照れてたよね? なに目光らせてワクワクしちゃってんの?
「バックは、こう」
「やめろおおお!」
 藤岡から積極的に聞かれたからか、松田は嬉々として俺をひっくり返した。ぐいっと腰を持ち上げられる。
 ーーそのあとのことは思い出したくもない。

 客が帰ったというので部屋に戻ると、上機嫌な同室者に恒例の萌え語りを聞かされた。
「ーーてなことがあってさ、はあ、年下攻め最高! あの二人、実は気が合うんじゃないかと思うんだよね」
「……毎回思うけど、藤岡の話は自分がこんなネタにされたらと思うと聞いてるだけで恐いな。鳥肌がたつ。先輩も松田も藤岡の被害者だな。妄想の餌食にされてる」
「うるさいなあ。でかい身体しといて恐い恐いって、みっともないよ。いい加減慣れたら?」
「化けの皮かぶってるやつに偉そうに言われたくない。なんで俺、こんなのと腐れ縁なんだろ。自分で自分が可哀想になってきた」
「あ、上手いこと言ったよね、腐れ縁って。確かに『腐った友人との縁』だよね」
「上手くねえよ」
 頭をはたくと、ほっぺたを膨らませてぶりっこした藤岡が「痛いよう」と言うので、おまけに蹴りをいれてやった。
《終》