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希望に満ちた朝


朝になって目覚めた。夜明け前の冬の朝、窓の外には真っ暗闇がまだ広がっているであろう時間。
片隅に押しやった一人用テーブルの上には、昨日の夜食べ散らかした弁当ガラとカップ麺の容器、ビールの空き缶なんかが
そのまま雑然と影になっている。
寒くてたまらなかったから大智にくっついて寝た。それで間違いが起こった。
大学に入って初めて親友と呼んだ男の部屋へ、初めてのお泊まり。いったいどっちにより多くの下心があったのか。

飲んでるうちに好きな奴の話になって、お互いに試すような言葉を投げて確信を深めて、それでも勇気が無くてそのまま寝た。
『寒いからそっち行っていい?』は絶好の口実だった。肌が触れた途端二人ともが生唾を飲み込んで、
その音を聞いたせいで告白よりも衝動が先走った。
何も言わずに口づけあって、そのあとやっと「朋希が好きだ」と聞き取れないようなかすれ声で言われて、俺は何もわからなくなった。
体がカッと熱くなってあれがギンギンになって、夢中でしがみついて口を開けて噛みついて、こすりつけて腰を振った。
大智の方が体格がいいから、なんとなく俺が女役かなとは思ってた。
寝る前に浴びたシャワーではひとりで前も後ろも綺麗にしていたから、俺に自覚がなかったなんてやっぱり嘘だった。
俺は期待して今夜来た。大智に全部やるつもりだった。
大智が俺のものを扱きながら後ろにそっと触ってきたとき、俺は嫌がるふりだけしてみせた。
そうだ、本当にふりだけのつもりだったのだ。

一緒にかぶった布団の中で俺がもぞもぞしたもんだから、大智が「ウン……」と目を覚ました。
「あ……朋希」
寝ぼけた声で俺を呼び、次の瞬間大智はガバッと身を起こした。
「朋希、俺、ごめん!」
土下座せんばかりのいきおいですがりつかれる。そう来られるとこっちも泡をくう。
恥ずかしくて居たたまれないのは同じだったから、寒さも忘れたようにこめかみが熱くなって汗をかく。
「や、俺、俺こそごめん、その、悪い、こんなだとは自分でも知らなくてさ……」
「いやいやいや、俺がへたくそで、俺初めてでよくわかんなかった、もっと勉強しなきゃいけなかったんだよ、
 せっかくお前『いい』って言ってくれたのに……もっとよくほぐすとか道具使うとかたぶんいろいろあったんだよ、そうだよ、俺が悪い」

二人で正座してうつむいた。
「俺、普通にはいるもんかと思ってたよ」
「うん……DVDの世界は嘘だった、っていうかあの人らプロだろ」
大智は肌色のパッケージに恨めしげに目をやる。
「俺にテクニックがあれば」
「いや、たぶん俺が拡張とかしとかなきゃいけなかったんだ」
「拡張……それっぽい用語だな、朋希、ひょっとしてもともとそっちの人?」
「いや、全然。昨日トイレでちょっと検索したぐらいだ。大智こそこんなDVD買う奴とは思わなかった」
「うん……俺、ちょっと自覚あった、自分がガチかもって。なのに」
大智は「ああーっ!」と叫んで倒れた。
「俺もうダメだ、全然童貞で、失敗して、格好悪くて。朋希ごめん、ほんとごめん」
「いや、俺の方こそ大智に悪い。お前の初めてが台無し。まさか俺のケツがあんなにかたくなだとは思わなかったよ。
俺、完全に力抜いてるつもりなんだよ、でも全然」
「痛かったよな?」
「痛いよりも、どうやったら緩むのか本気で謎だった、俺の尻ってそんなに狭いのかなぁ」
「オリーブオイルつけたのにな」「専用の何かじゃないとダメなのかもな」「コンドームはあってもなくても入らなかった」
「精神的なもんなのかも」「風呂であっためてみるのは?」

俺達の会話はだんだん、日頃ゼミでの、より効率的な試料の作成方法について検討しているような熱を帯びてきて、
「よし、今日土曜だし、一日いろいろ調べてみよう」
と大智の提案で本日のテーマが決まった。
俺達二人の班はいつもいい成績を上げてきたんだ。指導教官も言っていた、目的を見失わず実験計画を適正に立てて、
必要があれば器具は自作、比較検討を怠らず綿密に実行すれば必ずや成果があがると。
「じゃ、朝飯食ったらまた頑張ってみようか」
「部屋も片付けてな」
「ああ、綺麗な部屋でファブ○ーズかなんか良い匂いふって、リラックス効果狙ってみよう」
好きな奴といつもの調子が戻って、いい気分になってくる。俺達はやっと笑いあった。
窓の外は白々と明るんで、希望の朝。