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堅物と愉快犯


「どうせお前はまた面白がってやってるんだろ」



片霧朔 2-B所属 指導回数:7回目
サラサラと小奇麗な文字がプリントを走る。ついでに溜息も一つ。
「またお前か…ちょっとは大人しく出来んのか」
眼鏡を取って目元を指で揉んでる。そんなに歳食ってない筈なのに親父臭い。
「無理っすね!てかピアスぐらい良いっしょ普通」
「馬鹿モン、没収に決まってるだろ。放課後取りに来い」
「あでっ」
ファインダーで頭を叩かれた。うちの校則厳し過ぎる。校則も厳しいが、ついでに言うとこの生徒指導の金剛はもっと厳しい。
ちょっとでも校則に違反してると一瞬でアウト。見逃してなんてくれない。怒った顔がまた怖い。「鬼の金剛」なんてベタなあだ名が付くぐらい怖い。
40、50代にありがちな熱血体育系でもない28歳優男風の癖に空手有段者だと。
皆は恐ろしがって金剛の前では大人しいけど俺は違う。だってこいつの怒るとこ見んの、面白いから。まあ後はちょっと構ってもらいたかったってのもある。ちょっとだけな。
わざと制服着崩したり髪染めてみたり、今日はピアスをしてきたら案の定捕まった。
そんなこんなで今ではすっかり生徒指導室の常連の俺は、金剛に顔と名前はしっかり覚えられたようだ。

「せんせー、ピアス取りに来ましたー」
生徒指導室に行くのが楽しみなんて奴はこの学校で俺ぐらいだろう。性格悪いのはちゃんと分かってる。
返事が無かったからキョロキョロと室内を見渡すと、珍しく金剛は奥の椅子で居眠り中だった。
イタズラのチャンス。音を立てないようにそっとドアを閉めて、忍び足で接近。目標は未だ眠ったままだ。
それにしても怒った顔は怖いとはいえ、近くで見ると中々綺麗だとは思う。イケメンが怒ると怖いってのは本当の話だったのか。

さてどうしてやろうかと考えた末、手始めに眼鏡を頂戴することにした。これだけ起きないなら眼鏡取っても大丈夫そうだし。
「失礼しまーす」
起こさないように耳元で囁いて眼鏡に手を伸ばそうとした瞬間、
「片霧」
パチリと金剛の瞼が開いた。ついでに腕もガッチリ掴まれた。
「っヤバ」
「何してる」
「えっと、その…ピアスを返してもらいに来たんすけど…寝てたんで先生の綺麗な顔にイタズラでもしようかと」
へらりと笑うと溜息をつく。本日二回目。幸せ逃げんぞ。怒鳴らないのも珍しいけど。
「お前…馬鹿だよな」
「ちょ、酷いっすよ!」
悔しいから椅子に乗り上げてやる。ついでに掴まれてた腕も振りほどいてやった。
「そんなに怒ると綺麗な顔が台無しっすよ」
女を口説くみたいに、おでこにキスの真似。さあどうだ、遂に怒るか?
ニヤニヤしながら反応を見れば意外にも目を見開いていた。あれ、予想してたのと違う…と思った、ら
「どうせお前はまた面白がってやってるんだろ」
先生の顔が近くなった時には ちゅ、と 俺の唇に何かが当たー
「…え?は?!」
思わず後ずさって頭を抱える。
何今の。今の何。てか結構まつ毛長かった。いやいやそういう問題じゃない!
ドアを開ける音に慌てて振り返ってみれば何食わぬ顔した金剛が去る所で。
「これに懲りたら大人しくしとくんだな」
イイ笑顔で出て行った金剛を一人見送った俺は、火照る顔を静めるために暫く蹲る羽目になったのだった。

どうやら堅物だと思っていた教師のとんでもないモノを掘り起こしてしまったと俺が気付くのは、まだもう少し先の話。