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着膨れ


冬になった途端、こいつは二回りほど大きくなった。
別に太ったとか身長が伸びたとかそういうことではない。こいつの成長期は既に終わっている。
ようするにこいつは、極度の寒がりなのだ。

「…お前今日何枚?」
「うー…五枚、かなぁ」
「着過ぎだろ女か」
「だって寒いんだからしょーがないじゃん…うぅ、もうちょい着てくればよかった…」
もこもこ、そんな擬音が付きそうな格好でまだ寒いと言うか。完全防備にも程がある。
「高校が私服のとこで良かったな、お前」
「寧ろそれで選んだし」
「アホか」
ゆっくりと歩く通学路に俺達以外の姿はない。毎回着替えるのに時間がかかるこいつに合わせて早めに家を出ているから、皆が登校し始めるにはまだ少し早い。
ふと悪戯したくなった。
数歩前を身体を縮こまらせて進むこいつの、赤くなった頬に手袋をしていない俺の手を押し付ける。
「っひぁう?!」
「ふっ、何その声」
「おっま、何すんだよバカ!冷たい!!」
思った通りのいい反応が返ってきて、俺は満足した。
「冷たい俺の手もあっためてくれませんかねー?」
コートのポケットに突っ込まれていた手袋付きの奴の手は暖かい。わざと茶化しながら俺の手もろとも突っ込んだ。
斜め右下に見える俯いた顔が、赤みを増した気がした。