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一緒に暮らそう


「お金も節約出来んじゃん」
 篠原との関係は、高校だけだと思っていた。
「もしかして、俺、森君にもてあそばれてたの?」
 ショックーと言いながら全然衝撃を受けてなさそうなのに、少しばかり腹が立つ。
「お互いの大学の真ん中あたりは、ちょうど物価高くなさそうだし……」
「待てよ。話を進めるなよ」
「……もっと好きな相手が出来たらフって良いって、森君はいつも言ってたけどさ。俺はフる気ないし。少子化問題に取り組むつもりもないし」
 モテる奴がこういうこと言うと、持たざる者はどう反応していいのか分からない。怒っていいのか。いや、まずは
「自分勝手過ぎるだろ。俺の気持ちは分かってんのかよ」
「自分勝手なのはどっちなんだよ。もっと好きな人が出来たらフれとか、好きな子から言われて、俺が傷ついてないとでも思ったの」
 篠原の眼差しが痛い。だって仕方ないじゃないか、社会的に真っ当な付き合いじゃないんだから。
 篠原はモテるんだから、良い子が居れば付き合えばいいじゃないか。
「……それは、だって」
「森君は俺のことを考えてくれてるみたいだけどさ、それってフラレたときに自分が傷付かないようにしてんじゃないの。俺のこと信用してないんじゃないの。それとも俺はこんなに好きなのに、森君は俺のこと好きじゃないの」
 好きじゃないわけあるか、と、返したかったが、高校で終わると思って整理していた心がグラグラ揺れた。
 卒業したら、段々疎遠になって、別れるとも言わず別れるんじゃないかと思って。
 せっかく諦めようと思ってたのに。
 忘れようと思ったのに、何言ってんだコイツは。
「俺はまだ甲斐性がないし、責任とか持つにはしっかりした職業考えたいし、やっぱ進学出来るならした方良いかなと思って進学するんだよ。だから、森君、どうせ暇ならちょっと一緒に住んでみて決めてよ」
「何を決めるんだ、何を」
「一生添い遂げられるか」
 何言ってんだコイツは。
「森君は……俺と住むの、イヤかな」
 篠原はすごい剣幕で押してきたと思えば、一転、不安げに声のトーンを下げた。
「俺は、森君とずっと一緒にいたいから。そのためにどうしようって、ずっと思ってて……」
「篠原、俺は……」
「自分勝手かもしれないけど、でも、イヤじゃなければ、チャンスくれよ。なに、もう終わる関係みたいにしてくんだよ」
 気がつけば篠原が俺のことを抱き寄せて、頬を俺の頭にすり付けた。
 少し大型犬に似ている。
「森君が俺のこと、信用出来るように頑張るから。惚れ直させるくらい努力するから」
 なんだよこれ、スゲェ断り辛いじゃんか。

「だから、俺と一緒に暮らそう」