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ひょろい×筋肉質


対戦相手は、いかにも柔道家然とした筋肉むくつけき男、金丹玖高校柔道部主将、豪山岩雄。
「ひゃあ……」
対するは柳葉日和路、廃部寸前の灯火高校柔道部を救うべく、急遽勧誘された助っ人部員だ。元バスケット補欠部員。
「どうして柳葉を主将にしたんだ……」「だって、みんな怖がっちゃって……」
顧問教師と部員が頭を抱える中、「始め!」の声が無情にもかかって試合が始まってしまった。
「ヒョロー! いや、ひよろー! ケガだけはするなー! 逃げろー!」
顧問の声が日和路に届いたかどうか。

「オラオラオラオラオラオラ!」
背こそ互角であったが三倍も違う厚みの巨体が、日和路に襲いかかる。
あっというまにいい形で襟をとられ、日和路はその名の、嵐の中の柳のようにふりまわされる。
日和路の長くて細い手が、それでも豪山の襟ににょろりと伸びて、
「おお!」
見ていた部員達は喜んだが、顧問にはそれが、単に救いを求めてしがみつく場所を求めただけにも見えた。
勝敗は完全に時間の問題だった……が。

豪山はあせった。今まで豪山の襟に手を伸ばすことができた者はなかったから。
豪山は人より高い身長、強引な試合運びで、極力相手に自分の体を触らせないようにしてきたのだった。
豪山には、人に知られてはならない弱点があった。ああ、それさえ無ければとっくに全国の大舞台に立てていた逸材であったのに。
今、人並み外れてひょろりと長い日和路の手が豪山の鎖骨に触れる!
「ァアン!」
瞬間、豪山の手が滑った。豪山の誇る90キログラムの握力が、瞬時にゼロになった!
「あれ?」
日和路の手が今度こそしっかりと襟をつかむ、と同時にその長い中指が豪山の首筋をツッと撫でる形になる。
「ンフッ!」
咆吼というには甘い声を上げて、豪山の足がもつれる。
崩れかけた豪山の体重が日和路にかかる。
しかし、日和路の手は豪山の襟をつかんで離さない。なにしろ元バスケ部なのだ、こちらも握力はある。
「でかした!」
顧問の目がキラリと光った。

「日和路ー! 攻めろ、首だ、素肌にいけ!」
最前まで恐怖におびえていた日和路は、思わぬ形勢逆転に夢中になった。
道着の内側に潜り込んだ親指で、鎖骨周辺めったやたらにグリグリともみしだく。
「キャウン! アッ、アッ、鎖骨は……鎖骨はらめ……」
効果は目を見張るばかり。雄牛が倒れるかのように、不倒の豪山が今、膝をついた!
「日和路、寝技だ、押さえ込め!」
「で、でも僕、寝技は教わってないです……」
「いいからやれ! またがって、とにかく首とか胸とか触ってろ!」
不測の事態に日和路はいっぱいいっぱいだ。顧問の言うがまま、上半身を預け全体重を掛けてまたがって、はだけた道着から露わになっている首や、黒々と体毛渦巻く胸を押さえ込む。
というよりも、指を動かし、なで回して、揉みまくって触りまくった!
今や豪山は、その名の山の如く動けなかった。
いや、正しくは動いている……肌をピンクに染め、日和路の下で身をよじっている。
「アッ、アウ、アアッ……もう、らめ、イヤ……胸も……ヤァ……らめ……アアッ!」
豪山の上では、日和路の長くて細い手指がいつまでも必死の様相でうごめいている。
その一挙一動に豪山は声をあげ、今ここがどこであるのかすら忘れたかのようであった。
圧倒的な試合。
客席はしんと水を打ったように静まりかえり、身じろぎする者とてない。
そして三十秒が経った。

副審と主審の旗が同時に挙がった。高々と。
「一本!」
豪山のひときわ高い声が響くのと同時。日和路の初勝利の瞬間であった。