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満月の夜に人になる

神様では、なかったのかもしれない。

『明日の満月の夜、お前を人間の姿にしてやろう。
 ただし、次の満月が沈むまでに相手と結ばれれば本物の人間になれるが、
 愛されなければ朝日と共に死ぬさだめだぞ』

それでも僕は頷いた。
だって、トモ君のことを見ていられなかったんだ。
親友を好きになってしまって、眠れずに悩んでいたトモ君。
彼に好きな人がいると知って、毎夜枕を濡らしていたトモ君。
その涙を拭ってあげたくて、震える肩を抱きしめてあげたくて、鳴咽が聞こえるたび僕は願った。
――僕が人だったら、トモ君を慰めてあげられるのに。
――僕が人だったら、トモ君を愛してあげられるのに。
――神様、僕を人間にしてください。
って。何度も何度も。
だから、悪魔の囁きでもよかった。
人間になって、トモ君を支えることが出来るなら、結局泡になるのでもいいんだ。

今夜、僕は人になる。
人間になって、トモ君を抱きしめて、トモ君に愛を囁いて、それから、それから。


窓辺にいた僕は、トモ君が帰ってくるのを遠くのうちから見つけた。

トモ君は、久方ぶりの笑顔だった。
泣いたのか、擦った跡のある目元。夕日に照らされ、なお赤く染まる頬。
並んで歩く隣に向けた、照れたような微笑み。

あぁ、そっか。
トモ君、幸せになれたんだね。
僕の腕は、使わなくてよくなったんだね。
神様、ごめんなさい。人間の姿は、いらなくなりました。
二つの影がそっと寄り添うのを見届けて、僕は一粒だけ涙を落とした。





少年が、出窓の鉢植えの蕾が花開く事なく枯れているのに気付くのは、それから二日後だった。