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倒した戦闘員のマスクをはいでみたら

マスクの下から、見慣れた素顔がご対面。シュールな展開だ。
俺は衝撃に打たれ、地面に組み敷いた黒づくめの男を呆然と見下ろした。
「えーと、師匠……?」
「よお。久し振り」
「あ、どうもご無沙汰してます……ってアンタ何してんですか!?」
「見ての通り、戦闘員」
「……」
師匠だ。間違いなく師匠だ。
一年前にふっつりと消息を絶った師匠が、敵にまぎれて襲いかかってくるなんて。
空白の一年間に、一体何があったのだろうか。
沈黙に耐えかねたのか、師匠はふにゃりと笑って口を開いた。
「いや、不肖の弟子がしっかりやってるかなぁと心配して、ちょっと様子見に」
「それは、半分嘘ですね」
「半分は本当だ」
「で、もう半分は?」
「あっ!痛たたた……さっき蹴られたところが……肋が折れたかも…痛たたた」
上からどいてやると、師匠は痛い痛いと騒ぎながら脇腹をさすりだした。
前々から人間離れしたところはあったが、脇腹にまで肋骨が入ってるんですかアンタは。
「よろしければ昔直々にご教授いただいた方法で骨を接いで差し上げますが」
その言葉に少しばかり青ざめた師匠は、ひょいと上体を起こして、観念したように溜息をついた。
「おまえ、アーク・ダーマって男を知ってるな?」
「知ってるもなにも、ここ半年ほどあいつの一派と絶賛交戦中ですよ」
「私と奴とは、アカデミー時代の同級生なんだがな。
 実は奴にちょっとした弱みを握られてて、その、協力させられることに……」
「そんなあっさり敵の脅しに屈してどうすんですか!っていうか愛弟子の俺を売るな!」
「本気で殺すつもりはなかったんだからよしとしろよ!二分くらいの力でちょちょっと戦ってみせて、
 ごめんやっぱ敵いませんでしたーって言って逃げるつもりだったんだよ!」
「このアホ師匠が!」
勢いよく繰り出した俺の拳を左手で受け止め、師匠はあきれたように笑ってみせた。
「だからさ、本気でやって勝てるわけないでしょ?あれもこれも全部、私が教えたことなんだから」
大きな掌に包まれた拳が、じんと痛んだ。
そう、この人に勝てるわけがないのだ。だから尚更、敵方につかれては困る。
「じゃ、そういうことで」
「ちょっと待った!」
そそくさと逃げようとする師の襟首を慌ててつかまえる。
「しつこいねお前も。まだ何かあるのか」
「師匠。師匠が外聞を気にするたちなのはよくよく存じ上げています」
「うん。わりと有名人だしな」
「もしまたあいつの元に戻るつもりなら、"俺だけが知ってる師匠の恥かしい秘密☆"の数々を
 証拠写真つきで匿名掲示板にばら撒きますが、それでもようござんすか」
「……よくない。すごくよくないぞそれは。……で、一体私にどうしろというんだ」
「別に。俺んとこで大人しくしててくだされば、それでいいです」
「え?あー、それだけ?うむ、ならばよし。仕方がないからお前のところに居てやるとしよう」

独り立ちしてからも、学ぶことはまだまだ多い。
俺は師匠を通じて、放浪癖の抜けないオッサンを捉まえておく術を学ぶこととなる。