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エコ攻×エゴ受

「お前さー、クーラー点けるのやめろよ、環境のこととか少しは考えろ」
巧はリビングに入ると、廊下との温度差に呆れたように声を掛けた。
「うるせーメガネ、お前今日の気温しってんのかよ31だぞ31!夜の10にだぞ!死ぬ!クーラーつけなきゃ死ぬ!環境なんか知るか!」
テレビに釘付けになったまま、信之介は答えた。
「だからってせめて28だろ25ってなんだよ」
リモコンの表示をみた巧は溜め息をつく。
「それぐらい暑いだろ!お前は俺を殺す気?」
それを聞いて巧は欝陶しそうな顔をした。
その一言が決め手になったように、
「暑いくらいじゃ死なねーよ」
ピッ、問答無用でクーラーは切られた。
「うわー何すんだお前!鬼畜!外道!」
「外道結構」
しゃあしゃあといって、ソファに腰掛ける。
「くっつくな!隣座ってんじゃねーよ余計暑くなるわ!」
信之介は騒いだが、彼が退く気配がないのを悟るとずるずると床に滑り落ちて移動した。
「暑い中ビール呑むのがいいんだろ、ほら」
巧はキンキンに冷えたビールを手渡してやったが、叶はありがとうも言わずに、プシュッ、と蓋を開けるとゴクゴクっと呑んでから、文句を垂れる。
「俺はクーラーをガンガンに効かせた部屋の中で呑むビールのほうが好きだ…」
「だからお前、環境のこと考えろよ、ツバルとかガラパゴス諸島とかシロクマとか、なにかしてやりたいと思うじゃねーか」
「なにそれ知らねー、俺には関係ねーもん」
小バカにしたように信之介は言った。
「バカ、ある動物が絶滅するってのは一大事だぞ!
お前な、種の多様性はものすごく重要なんだぞ、生態系はってのはものすごく微妙なバランスの上に成り立ってんだ、
あの蚊やゴキブリですらもし絶滅したらどんな影響があるかわかんねーんだぞ、
生態系が崩れたら俺たち人間の生活だって――…」
「あーハイハイうるせーうるせー、お前の夢は温暖化と環境保護だもんなー、
サークルも環境サークルだし、理系サマのゆーことはバカ文系にはわかんねーよ」
「温暖化は夢じゃねーよ…日文なら日本語くらいまともに使えよ…」
巧は冷めた目で信之介を見た。
「うっせーよドバカ、この大学で1番偏差値低いの日文だって知ってんだろ、お前んとことは偏差値が15くらい違うんだよ」
開き直っているのか、信之介はむしろ馬鹿にしたように笑う。
「確かにお前らなんでそんな馬鹿なんだろうな、お前ら50ょいだろ」
巧は小さな軽蔑を隠そうともしていなかった。
信之介はちび、と呑んで呟く。
「俺お前のそういうとこ超キライ」
巧は全く動じずに、一口呑んでそれは結構、と返した。
「大体俺はなー、最近のエコエコエコエコ言ってる感じが大っきらいなんだよ!
俺がこの世で何が1番好きってコタツん中でアイス食うことだよ!
文明の利器のただ中でその恩恵を享受することが至福なんだよ!」
「おーよくそんな難しい言葉噛まないで言えまちたねー」
巧は無表情のまま言った。
信之介は聞こえなかったように続ける。
「それに東京分別の種類多すぎなんだよ!なんだよ紙ゴミ生ゴミ燃えるゴミプラスチック金属布ペットボトルびん缶もろもろどんだけ種類あんだよ
俺の田舎なんか燃えるゴミと燃えないゴミ二種類だったぞ!なんでそれじゃいけねーんだよ!」
「そりゃその自治体が間違ってるよ、まぁ金のない地方自治体じゃあ無理もないだろうけどな」
やりたくてもやれない部分もあるだろうし、というニュアンスはしかし、酒に酔い怒り上戸になった彼には通じない。
「金ない地方…?」
明らかにムッ、として信之介は聞き返した。

「またお前そうやって地方をバカにしやがって!
いっとくけど俺の住んでたとこはなー、デパートだってコンビニだって電車だってバスだってフツーにあるし
駅の近くには雑誌に載ってる店だって入ってるし東京にでてこなくたって大概のもんは揃うんだよ!それを」
「分かった分かった喚くな、近所迷惑」
しかしあくまで冷めているその態度がますます信之介の癇に触った。
「あぁ!?」
余計に声が大きくなる。
「そーやっていっつもすかしやがって、そーゆーとこほんと気にいらねーわ!
マジうぜー酒がまずくなる」
そう言って彼は立てた両膝に頭を押し付けた。
「お前性格悪いのに頭はいいしイケメンだし女の子にはモテるし顔広いしまじ意味わかんねー、
なんでそんななんでも出来るんだよバカ…」
男としてのプライドが踏みにじられているのが耐え切れないのだろう、信之介は徐々に涙混じりの弱々しい声になっていった。
「お前だって友達は多いじゃねーか、お前によく似てバカでチャラそーだけど」
その言葉はフォローなのか追い討ちをかけるためなのか、巧の無表情な顔からはその感情は読み取れない。
「女だって尻と頭軽そーなギャルっぽいのなら結構いっぱいいっつも一緒にいるじゃん」
今度は明らかに馬鹿にして、巧は言った。
「俺は色んな誘いことわってお前優先にしてんのにお前はすぐすっぽかすし約束破るし」
今までと全く変わらない調子で、巧は言った。
しかし、缶を口に運んだその瞬間の横顔が、少し寂しそうに、見えた。
「知るかボケ」
信之介は暗く吐き捨てた。
「お前なんか絶滅危惧種と一緒に滅びろ」
巧がビールを置いた。
「お前さ、よくそんなことが平気で言えるよな」
苛々と不機嫌をあらわにして、彼は信之介を押し倒した。
固いカーペットを背にして、信之介の頬を、汗がひとすじ、伝う。
彼は魅入られたように、動くことが出来ない。
これから起こることに怯えているのか、期待しているのか、きっと。
「俺がお前のどこが好きか、知ってる?」
問いかけながら、その間尚も巧はシャツをたくしあげ、手を入れ信之介の体をまさぐる。
「普段クソ生意気でチャラチャラしてるお前がヤってる最中にさ、
気持ち良さでとんじゃってィかせてって泣いて許しを乞うあの顔だよ」
巧の手の感触に、酔いとは全く違う感覚の火照りが生まれてきているのを、
信之介は感じていた。

「バカ、やめっ…」

「お前のその自己中なところと曲がった根性、俺が矯正してやるよ」

巧がメガネを外した。

絶対、こっちの方がいい、自分の置かれている状況も忘れて、そう思う。

彼はこういう時しかメガネを外したところを見せないけれど、
伊達メガネなんかしていない彼の方が、信之介は好きである。