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ツンケンしてて恋愛にも淡白そうなのに本当はどうしても手を繋ぎたい年下攻め

とうに日は落ちて、息が白く煙る冬の夜。
4つ下の幼馴染(男)が黙々と隣を歩いている。
俺は大学帰り、こいつは部活帰り途中の駅でばったりと遭遇した。
別に隣同士なうえ付き合いは長いから、一緒に帰ることに違和感はない。
ただ、この沈黙がひどく痛々しいのは、何の因果かこいつと付き合うことになったからだ。


きっかけは、俺の家でゲームで対戦してた時のことだ。
どうだー高校生活はーとか彼女はできたかーとか、そんな話題をうざがられつつふっていた。
「女とか興味ねーよ。あんたや友達と遊ぶ方がまだ楽しいし」
「そうなの? 俺はおまえくらいのときは結構楽しんでたけどね。
 授業抜け出してさ、こっそり屋上とかで……」
言ってから自分の失言に気付いた。
俺はこいつが通ってる学校のOB、そこはれっきとした男子高だ。
「あんた、男が好きだったの?」
うまいごまかし言葉も思いつかない。「男がじゃない、男もだ」とさらなる墓穴を掘るのが精一杯だ。
「俺のことも、そういう目で見てんの?」
リアルでも画面の中でも俺は立て直しがきかず、あいつは的確なヘッドショットで着実にキル数を稼いでいく。
すいません俺Mなんでお前のそういうジト目大好きです、とはさすがに言えない。
あーとかうーとか何とも言えない唸り声を出していると、ぽつりといいよと声がした。
「いいよ。別に、つきあっても」
とりあえず引かれてはいないようでよかったとか、そんなあっさりと決めれる奴だったのかとか、
年下のくせに不遜だけどこいつ以上に気の合うやつはいないとか、
いろんな思考が渦巻く混乱の極みの中で、俺はよろしくお願いしますと返事をした。

はい付き合うことになりました、だからといって何が変わるわけでもない。
あれから顔を見るどころかメールや電話などの連絡もなく数日経ち、心構えのできていない状態で今この事態を迎えている。
横を向けば何考えてるか分からない、いつもながらの仏頂面で、隣を歩く奴がいる。
ぶらぶらと夜風の中で、むきだしの手が泳いでいた。
「……おまえさあ、寒くないの?」
赤くかじかんだ手が痛そうで、思わず手に取っていた。
――瞬間、手が振り払われる。
「あ、ごめん。つい触っちゃって」
少し怒ったような顔つきで頬を赤くしている。
やっぱ、駄目だったかと心に影が差す。
「……あんた、なんで、そういうことさらっとできるんだよ……。
 俺、すっげえタイミング計ってたのに……!」
とてつもなく悔しそうな顔で、睨まれた。
茫然としていると、せっかく会えるかどうか待ってたのに、
せっかく雰囲気作ろうとしてたのに、と次々理不尽な怒りをぶつけられる。
俺はそこでやっとさまよわせている冷たい手の理由に気付いた。
「なんだ。そうだったのか。了解了解」
安心と、微笑ましさで頬が緩む。
そんな俺の顔を見て、馬鹿にされてると思ったのか、余計に顔を赤らめた。
「なんかそーゆー、あんたのいらないとこだけ余裕そうなの、むかつく」
「べっつに深く考えなくても、俺があっためてやるよ……とかいって、きゅっ、とやれば万事オーケーだろ」
そう言って笑うと、俺はあんたみたいにチャラくないんだよとか、それはまだ早いだろとかなんかごにょごにょ言っていた。
俺は俺で、ちゃんと俺のこと恋愛的な意味で考えてくれてるんだなあ、
意外な一面があるものだなあと、いろいろ嬉しく思っていた。


ただ、冗談だったはずのアドバイスを真に受けてクサい台詞を吐かれたあげく、
きゅっと抱きしめられて、全身温められることになるのはまた別の話だ。