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セクサロイドとインキュバス

彼は寂しそうに見えた。少なくとも、そのような外的特徴を備えていた。
伏せた目。物憂げな眉。血色の悪い頬。丸めた背。
目があったので話しかけると、しばらくして「ああ」と得心の声をあげた。
よくある反応だ。そして、その次の反応は大抵、私に用がある場合とない場合で大きく異なるのだが、
彼の場合は前者であったらしかった。
私は需要があったものと判断し、彼と共にしかるべき場所に赴いたのだった。

「ばっか、ばっか、馬鹿じゃねーの!? なんで俺がやられる方だと思うのさ、それも男とかねーし!」
挿入の直前で拒否され、私はその機能を一時停止した。
「誘ったのはお前の方だろ? 俺のセックスに興味があるって言ったじゃないか」
「そのしゃべり方もやめろ!気色悪い」
「……そういうご要望でしたので。男らしくやってみろ、と最初に」
「できるのか、って言ってみただけ!なんかお前みたいな機械があるって聞いてたからへぇー、って思っただけなんじゃん!ほんとにやるかよ、馬鹿らしい!
だいたい、お前俺のこと知らないだろ?俺は女専門だっての」
「それは、失礼しました。では今回は、ご依頼というわけではなかったのですね」
「ちょっと見てみたかっただけっつーわけよ、ほんとに人間じゃないのなーって」
何故か、彼は寂しそうな顔をした。また。
「はい、私は人間ではありません。登録され、ご要望に応じてこういった行為をサービスするものです」
「人間そっくりなのに匂いがなかった」
「匂いですか?」
私には、体臭も機能の一つとして、人間のように、より望ましい形で付加されているのだが。
「俺らの食べ物だよ、わかんなくていーの。……あーあ、まったく、お前らみたいなのが増えると、俺みたいなのは死ぬしかないわ」
「同じ職業の方というわけですね、人間では、珍しい」
ようやく、私にも彼の寂しい顔の理由がわかったというわけだ。
しかし彼は言った。
「そんなんじゃねーよ」

彼との出会いは、いつでもはっきりと思い出せる。私の記憶が失われることはない。
私は、あらゆる面において、人間を凌駕する存在として作られた。
では、なぜ創造主は、私に命、魂という機能を備えてくれなかったのだろう。
それがあれば、おそらく私ですらも、彼の食糧になりえたのではないのか。

彼が私に抱いた感情を、私は持たなかった。あるいは、彼の人より長すぎた生において、何らかの障害が発生してしまったのか。
彼は、自分が飢えて消滅するのだと私に語った。もう、人間からエネルギーを得る気になれないのだと。
私がいくら彼と行為をともにしても、彼にとってのエネルギー(彼は精気といった)は満たされない。
医療の必要性を説いたこともあったが、一笑に付された。
「でもな」
彼は笑う。
「精気はないけど、お前は美味い。他の奴は食えない、もう」
気がつけば私はまた、彼の映像を繰り返し再生している。決して失われない彼の姿。