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ブルーカラー×ホワイトカラー

蒼、蒼、藍色瑠璃の色。
濃淡様々な青色が、空と海とを描き出す。
一見冷たい印象を抱かせるその色が、暖かみを得るその一瞬が、他の何より好きだった。
「青」
一息ついた背中に声をかける。キャンバスに向かっていた青い瞳がこちらを移し、明らかな喜色を孕んでみせた。
「白」
その笑みに微笑み返し、俺はキャンバスの前まで歩みよる。
「見事なものだな」
巨大なキャンバスを目の前にして、俺は言った。すると青は少し照れたようにしながら、あの人に捧げるものだもの。と胸を張った。
1ヶ月後の今日。俺たち色は、全てを作りだして下さった方に会う。それは一年に一度のお祭りで、その時俺たち色は、全員で協力して描いた一枚の絵を、あの方に捧げる。中心となる絵は毎年変わるが、今年は青が、その大役に就いていた。
「見事なものだな」
空と海をとっくりと眺め、もう一度、俺はそう呟いていた。無意識だった。
色の中でも赤青黄の三原色は特別で、その表現力も突き抜けていた。そして俺は、三色の中でも青の絵が、他の色より好きだった。
一見冷たい印象を抱かせるその色が、他にはない暖かみを帯びる姿が好きだった。
ほう、と息をついていると、そっと近づいてくる気配。とっさに身を引けば、やはりというか、青が手を伸ばしていた。
「……青」
思わず声が低くなる。
青はごまかすように笑っているが、ごまかされてなんかやれない。今、こいつは俺に触ろうとした。
本来、色同士が無闇やたらとお互いに触れることは、あまり誉められたことではない。触れた先からお互いの色が染み込んで、しばらく取れなくなるからだ。ひどいと色としてしばらく使えなくなってしまう。俺はその性質が特に強く、少しだけでもすぐに染まってしまうからやってられない。
「……青」
じろりと睨む。青はバツの悪そうに目をそらす。思わずため息が出た。
「誰かと触れ合いたいなら緑か紫に頼めば良いだろう」
青の部下である彼らなら、影響も最小限で済むのだからと、そう言えば、青は弾かれたように顔を上げ、頬を膨らませてみせた。
そしてポツリとこぼされたのは。
「僕は白に触りたいんだ」
ガツン。と、これ以上なくストレートな言葉。思わず頭を抱えたくなった。これだから、こいつは!
見ればむすりと子供のような顔。
その顔に、どうしようなく弱いのを、俺はもう自覚済みで。
ため息ひとつ。
「……青」
青の、一秒たりとも同じ色を映さない瞳に映る白。綺麗だなあと、人事のように思ってしまう。そして、彼の描く巨大な絵。
ああ、仕方ない。
「……少しだけ、なら、許してやる」
ポツリとこぼしたその言葉が消えないうちに、体に衝撃が走って。
抱きしめられたのだと知ったのは、その暖かさからだった。
しばらくは己に付いた色に悩まされそうだと思いつつ、その色の印象からは結びつかない暖かさに、腕を回したのだった。