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狸×狐

「あっはは、また騙されてやがる。無様なやつめ。気分が良いなあ。うすのろをからかうのは気分が良い!」
俺の腹の上に跨がって、目尻をきゅ、と細め、口角を吊り上げケラケラ笑う奴の顔を見上げ、溜め息をつく。
襦袢の裾から飛び出た奴の尻尾がぱたぱたと動いて俺の太ももの辺りを着物越しに掠めるのがこそばゆい。
「いい加減どいてくれないか」
「嫌だね」
「なあ、ならせめて、俺の腕を膝で抑えるのはやめてくれよ、痺れてきた」
「ふうん」
そう言うやいなや、ぴしゃりと俺の手の甲を叩く。
指先が痺れる感覚に眉をしかめると、奴は一層ニンマリと笑った。
「な、僕は綺麗だったかい?まったく綺麗な女だったろ?お前はいつも、あんな風に女を口説くの?お前なんかに着いてくる女なんて、いるの?答えてみてよ、さあさあ」
言い淀んでいると、またぴしゃぴしゃと痺れた手を叩いてくるので、仕方なく口を開く。
「…ううん、まあ、そうだなあ…大抵は……着いてくる」
上機嫌に動いていた尻尾がぱたりと止まる。
俯いたまま動かない奴に声をかけようか否か考えながら、二、三まばたきをしていると、いきなり頬をつねられた。かなり、強く。

「いひゃい」
「僕に騙されてのこのこ着いてくるうすのろの癖に、生意気なんだよ。一丁前に女なんか口説きやがって。なっさけない顔してさあ。こんな情けない顔した奴に着いてく女は、何考えてんだろ」
「さあ…顔はやたら、ほめられるけど」
「うるさいよ!ほんと憎たらしい。憎たらしいから、もっとからかってやる」
「あ、おい…」
「喋るな!」


お前だと分かっていて声をかけた。
そう告げたら、こいつも少しは可愛気のある顔をするのだろうか。
……まあ、喋るなと言われたので、少し黙っていようと思う。