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両片想い

親同士が仲が良くて、あいつとは生まれる前からの付き合い。いわゆる幼馴染だった。
人付き合いが苦手で勉強が趣味なんていう根暗な俺とは違い、あいつはいつだって明るくて、誰に対しても優しくて、俺には勿体無い友人だ。
中学、高校、大学まで同じ所に通うことが出来て、友人の少ない俺にとってはありがたいことだったが…

いつからだろう、あいつの女癖が悪くなっていったのは。
女に縁がない俺からしたら羨ましく思えるぐらい昔から女にモテてはいたんだ。けど、取っ替え引っ替えに恋人を作るなんて真似はしなかったのに。
あいつの女癖の悪さに口を出すつもりは無かったんだ。強く言って、嫌われたくなくて。

でも今回ばかりは口出しせざるを得ない。
大学で俺が世話になってる先輩があいつと付き合い、こっぴどくフラれたらしい。
泣きじゃくる先輩を慰めながら俺は、あいつに対して初めて怒りを感じた。
いくらあいつでも、先輩を傷付けたことが許せなかった。
応援していたんだ。
先輩は美人で、優しくて、素敵な女性だ。だから、今度はきっと大丈夫だって。
「オレが、心の底から愛せて、夢中になれる女を探し続けている」と。そう言ったあいつが、先輩を選んだことは純粋に嬉しかったんだ。
あいつが夢中になれる女なんて現れなければいいのに。ずっと、誰とも本気にならずにいればいい。
そんな俺の歪んだ想いがずっと心の奥底にあって、だけど、あいつと先輩なら仕方ないなと、叶わないなと諦めることが出来た。
それなのに…

こいつと喧嘩をしたのは、多分、生まれて初めて。
昔からこいつは控えめで他人に強く言えずにいたから、オレが一方的に怒ることはあっても喧嘩には発展しなかったんだ。
誰にでもいい顔して、フラフラして、何一つ…物事だけじゃなく人に対しても本気になれないオレにとっては、何をするにも真剣で、上っ面の笑顔なんて作らないこいつを凄く尊敬してたんだ。
勉強は好きじゃないけど、こいつと一緒にいたくて、何かと理由をつけて無理くり頑張って大学まで同じ所に入れた。
教え方がすごく上手で。こいつと一緒に勉強すると、勉強が嫌じゃなかったんだ。
人見知りは激しくても、本当はすごく魅力的な人間だから。もっと沢山友達を作ればいいのに。
昔はそう思っていて、だけどいつからか、独占欲が湧いて、こいつがオレ以外の奴と親しくするのがすごく気分が悪かった。
一緒にいる時も、そうじゃない時も、気がつけばこいつのことばかり考えてて、そういう事を世間じゃ何というかと気付いた時は本気で焦った。
認めたくなくて、色んな女と遊んで。でも、こいつの事を忘れて夢中になれる相手なんて一人もいなかった。

サークルの先輩がオレに告白した時は、しめた、と思った。
先輩は、女友達なんて一人もいないこいつをあっという間に丸め込んで仲良くなっちまった。
こいつは初めて女と仲良くなれて浮かれてるように見えた。先輩も先輩で、積極的に構ってるから、あーこいつら付き合っちまうんじゃないかってずっと苛々してたんだ。
けど先輩が好きだったのはオレ。
なるほどな、だからこいつに近付いたんだろ?オレの一番の親友のこいつに。
きっとこいつは先輩の事が好きだから。そんな理由で声をかけられたと知ったらきっと傷付く。…そう考えると、先輩のことがすごく許せなかった。
だから、付き合って、その気にさせてから、こっぴどくフッてやった。
これでもうオレの顔なんて見たくなくなるだろう。ついでにサークル辞めてくんねえかな、と、そう思ってたら。

こいつが、すごい剣幕でオレに突っかかってきたんだ。

「どうして先輩に酷いことをした」
「情報早いな、先輩に泣きつかれたか?」
「謝れ、土下座して、本気で謝れ。サークルも辞めろ。俺も一緒にやめてやる」
「は。何でオレが、つか何でお前も?」
「……先輩に相談されていたんだ、お前とのこと。良い奴だから、お似合いだって、応援してしまった」
「へえー、涙ぐましいね。自分の気持ちは押し殺して、身を引いて…ほんっと馬鹿みたいにお人好しなのな」
「なっ……ど、どうして、それ…」
「図星かよ。あーやっぱりな、お前先輩といる時ホント楽しそうだったもん。丁度いいじゃん。傷心してる先輩慰めて、お前が付き合っちまえよ」
「!?ち、ちがう…俺は!そんな風な目で先輩を見たことなんて…」
「なにそれ、うぜえ。今更誤魔化せると思ってんのか?応援してたって、嘘ばっか。お前がオレ達を見る時、明らかに嫉妬オーラ出しまくりだったぜ」
「……そんな…、だって…俺は………ッ…」

あーあ、泣かせちゃったよ。
最悪だ。
もう、オレ達の友情関係も終わっちまうかな。
…それもいいかもな。オレの中には、友情なんて綺麗な感情、きっと最初から無かった。
変に気持ちを誤魔化そうと足掻いて、色んな人傷付けて、一番大切にしたい奴まで泣かせちまった。

もう、何もかもどうでもいい。
どうせ終わってしまうなら、もっと、徹底的に、壊してしまえばいい。

オレは涙を拭うこいつの両腕をひっつかんで、強引にキスをした。