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午後二時四十分。
日差しがまぶしいこの部屋に居ると人の声がする。

『…来たのか?』
「久しぶり」
『久しぶり、元気してた?』
「元気元気」
『そうか、また大きくなったな』
「この前来た時から三ヶ月しかたってねーじゃん」
『いや、顔つきが変わったよ。もう17になったのか?』
「あぁ、先週な」
『おめでとう』
「ありがとう」

姿は見えない。
俺以外誰にも聞こえない。
でもこの声の主はこの部屋に存在してるんだ。

「じーちゃんこの部屋どうするって?」
『取り壊して新しい部屋を作るそうだ。もうこの部屋も古いからな』
「明治からあるんだっけ?」
『あぁ』
「…お前は…この部屋が無くなったらお前はどうなるの?」
『さて…分からないな、また新しい部屋に縛られるか、この部屋と共にいなくなるか』
「そっか」
『あぁ』
「……」
『何泣きそうな顔をしてるんだ』
「……」
『…昔と変わらないなその泣きそうになると唇噛む癖』
「泣いてねぇよ」
『昔はそのまま泣いていたけど…大人になって行ってるんだな』
「…」
『小さいお前の唇の血をぬぐってやれたらどんなにいいかと何度も思ったんだよ』
「お前に…会いたいし…触れたい」
『…俺もだよ』
「お前がずっとここにいちゃいけないのは分かってるんだ、でも…」
『不甲斐無いな、抱きしめてやりたいのに』
「…っ!!」

それから三ヶ月後その部屋は取り壊された。
新しく出来た部屋にはもう眩しい日差しをさえぎる壁が出来て少し薄暗い。
もうあの声は聞こえない。
最後取り壊される前日俺は部屋に泊り込んだ。
一晩中二人で会話をした。

「…好きだよ」
『俺もだよ』

その言葉を発したとき一瞬声の主の姿が見えた気がした。