※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

どうしようもないバカ野郎

夏にはまだまだ早いだろうに、額にも背中にも汗が伝う。
狭苦しい四畳半に二人きり。
なのに、奴はトランクス一枚で、部屋のど真ん中に転がっている。
「アチーよークーラー買おうよー」
起きたままそんな寝言を呟いて、大の字に伸ばした手足をモゾモゾさせる。
「無理。欲しけりゃそれだけの金を稼いで来るんだな」
吐き捨てるように返せば、不貞腐れてそっぽを向く。
空気の重い沈黙に耐えかねたのか、のっそりと立ち上がって部屋を出て行った。

本当にどうしようもないバカ野郎だ。
怠け者のくせに貪欲で、耐えるということを知らない。
奴への憤りに、体の内側からも暑くなる。
外気の熱を吸った壁は、凭れさせている背中の皮膚を焼いていくようだ。
中からも外からも暑さを押し付けられ、あんな奴とはもう別れようと考えていた。


「たっだいまー!はい、キンちゃんの分」

玄関から入ってきた奴の右手には、半分になった棒状の氷菓子がある。
その片割れは俺に向かって差し出している左手が握っていた。
黙ったまま受け取った、冷たいプラスティック。
(まあ、銀の奴にも良い所はあるしな)
舌を冷やす氷菓子に目を瞑り、何度目かも分からない別れの決意を取り消す。
きっと明日も明後日も、一年後だって別れを思っているだろう。
まったく、本当にどうしようもなく馬鹿なのは俺の方みたいだな。