※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

最後に伝えたい言葉

「十中八九脳漿ブチ撒けて御陀仏、やな」
ヒュゥ、と場違いな口笛の音。こんなときでも口許には狂犬じみた笑み。
――嗚呼、神様仏様。
この人のこのカオが見れなくなることだけが心残りです。

つい先刻まで縛られていた手首をさすりながら窓を覗き込む。
ここから飛んで助かる可能性は五分…というのはあまりに楽天的過ぎる数字だろう。
まぁ、どちらにしろ連中はおれ達を生かして帰すつもりはあるまい。
それならいっそ今ここでこの人と一緒に死ぬ方のも悪くない。
想い人と共に死ぬ。なかなか甘美な響きじゃないか。ああ、ますます悪くない。
死の間際の感傷か、押し殺してきた言葉が自然に口をついて出る。

「神崎さん、最後に聞いて欲しいことがあるんですわ」
「ぁア? なんや改まって」
「――おれ、ずっとあんたのこと愛してました」
「へッ! 寝言ぬかしよる。おどれは恋愛ドラマの見すぎじゃ、あほんだら。
そんなナマっちょろいモン見よるからこんな目に遭うとるんじゃ、え? このくそボケ」
「……あんたかて同じ目に遭うとるやんけ」
「あぁ? 舐めたクチ利きくさって、余裕やないかいクソボケ。
ええか、“生きて帰れたら一発ヤらせい”」
「……は、」
「どうせ言うんやったらこん位言うたらんかい、ドマヌケ」
「……言うたら、ヤらしてくれるんですか?……嬉しいな」
「おもろい、万が一生きとったら一発と言わんと腰抜かすまでヤらしたるわい」

男の口許が挑発的に釣り上がり、笑みの形を作る。
ギラギラと光る、敗北を知らない瞳で。
獰猛な獣のような、見る者の飢餓感を底無しに煽るような――。

「さ、行くぞ。腹括れよ」
「……ええ、さっきの約束、忘れんといて下さいよ」
「ハハ!その意気じゃ!」

――前言撤回。心残りありまくりじゃクソったれ、絶対生きて帰ったる!
おれは、強く誓いながら宙に向かって跳んだ。