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剣豪×ごろつき集団

「嗚呼、清左衛門様、格好良いやなァ…」
「“我が刀の錆となるか”…なぁんつって、渋いやねェ」

 細く開けた襖の向こう。
 皆で顔つきあわせてきゃいきゃいと頬に手ェ付けて騒ぐ様は、芝居見物を終えた町娘と大差ない。
 しかし、その風貌はと言えば頬にゃ刀傷、髭は不精に伸びてやがるし、可愛さとは無縁の顔の造作。

「…おい、おめェら…」
 頭領である俺の声も聞こえねェのか、浮かれたそいつらはあの憎き清左衛門の言葉を反芻してやがる。

「なァ、清様が俺を斬ろうとした時の台詞は“観念せよ”だったか?」
「いや、それは俺ン時だ、お前の時は、そうだな…“地獄に落ちよ”じゃあなかったか?」
「嗚呼!清左衛門様に斬られるんなら地獄にだって落ちますよ、ってなもんだな!」
「俺ら一人一人に声かけてくれる辺りに優しさ感じちまうよな」

 …あいつらは一体全体何を言っていやがるんだ?
 俺にゃァ到底理解できねェ。頭がふらつくようだ。
 ふらつきついでにガタンと襖に手を付けば、ようやくあいつらは俺に気付いたようだ。

「アッ!お頭!」
「すいやせん、清左衛門の野郎にまた不意打ち食らいやして!」
「今度こそ!今度こそ清左衛門の野郎の息の根止めてやりやすんで!」

 さっきまで“清左衛門様”“清様”と言っていたその口で何を言ってやがる。
 そう言ってやりたかったが、声が出ねェ。
 そんな俺に気付くこともなく、あいつらは声を揃えてこう言う。

「俺らァ、清左衛門の野郎のことを一刻たりとも忘れたこたァございません!」

 嗚呼、そうだろうよそうだろうよ。
 俺は痛むこめかみを押さえて、今後のことを考えるしかなかった。