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結婚詐欺がほだされる

友人は詐欺師だ。
これがまあ、よく口が回るヤツで、善い人面の上手い男だ。
ルックスは美形というほどではないが、会話が前述の通りやたら上手いためプラスマイナス=プラスみたいな男だ。
そんな友人が、また誰か騙そうとしているらしい。
次の標的は女性のようで、ヤツは得意気にその女性のプロフィールやどう騙すかをべらべら喋っている。
友人の悪い癖は、親友の俺だけにはこうして何でも話してしまうことだ。
誰にも分からない秘密を共有しているという点で優越感に浸っている私は、友人よりも外道かもしれない。
「女……なんだ、結婚詐欺でもすんのか」
女性は小さな子ども持ちで、夫は数年前に死別してしまったらしい。
少し、嫌な予感がした。
なにが不安なのか。友人が奪う金額は、人生を台無しにする程の金額ではない。
騙されたと気付いたとしても一々事件にする程ではないことが多い。まあ、友人がそういう性格の人間を狙っているというのもあるが。
今回も、だからそう大量の金は奪うまい。
危ないこともないさ。そう自分に言い聞かせた。

後日、私のマンションに来た友人は興奮した様子でインターホンを押してきた。
「どうした」
「あ、ああ。聞いてくれよ、俺結婚することになったんだ!」
ゴッ
「お、おい大丈夫か?」
「……たいしたことない」
ちょっと冷蔵庫に足の小指をぶつけただけだ。
「それより、なんでいきなり結婚なんだ?騙すんじゃなかったのか」
茶を入れながら、俺は友人に聞いた。
「あぁ、そう、そのな」
友人はバツが悪そうに、ではなく恥ずかしそうに口をもごもごさせる。
「子供が……」
「は?子供?」
「前も話したけど、子供がさ、いるんだ。バツイチっていうか、未亡人か。夫は事故で亡くなったらしくて、子供と、母親だけなんだな」
「知ってる。それで?」
苛苛してくる。どうも、友人らしくない。話し方もしゃっきりしないし、デレデレして、顔が緩んでいる。
「子供がな、英紀っていうんだけど。俺のこと、お父さんって呼んでさ。その、凄く懐いてくるんだよ」
「………で?」
「英紀さ、早くお父さんとお母さんが結婚しないかな。早くお父さんがうちで暮らさないかな、って言うもんだから。佳代さんもいいヒトだし」
「………………で、結婚する気になったのか」
「……………………………………うん」
「ばっ、お………!?!………おめでとうさん………」
「ありがとう」
ちくしょう。デレデレと緩みまくった顔して。



ちくしょう。やっぱりあの時こいつを止めておけばよかった。