追われる者×追う者
ああ、いっそ立ち止まれたなら。
このまま永遠に、俺はあいつの手の届かない位置に居続けるしかないのか。
時折振り返り、俺を追うあいつの姿を確かめているだけのこの状況。
捕らえられてしまおうか、とちらりと心を過ぎる想い。
…けれど。
俺が足を止めた時、
アイツの頭ん中を占めている、俺は消えるだろう。
アイツに追われる為だけに、
俺は走り続ける。
何故、追っているのか?
最初は確かに理由があったのに。
今でも、それは変わらない筈なのに。
けれど。
時折向けられる、アイツのあの瞳の奥の、カゲロウのように揺れる何かが気になる。
…無くなりそうで無くならない、アイツと俺の距離。
アイツを捉えるべく追っているのか、
その『何か』を知りたくて追っているのか。
今となっては曖昧で。
息苦しさにも似た、痛みがジリジリと胸を焼いて。
アイツの事以外、何も考えられなくなる。
最終更新:2009年04月13日 15:05