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どうでもよくない

「目玉焼きには何をかけるか?」
「そう。人類にとって最古にして最大の問題や」

久しぶりに同じ朝を迎えて、
ちょうど休日だったのでしばらくはシーツの中でゴロゴロして、
それからも未だ布団に魅入られている奴を置いて俺はブランチを作った。
炊き立ての白米、「ふ」の入った味噌汁と、アジの干物、
漬物の代わりにキュウリと白菜の塩もみ、そして目玉焼き。
日本人にとってこれだけ素晴らしい朝食が他にあるだろうか?
しかもこのむさくるしい男所帯で?

「俺の本命は正直に言うとソースや。
 それもお○ふくのソースやない、ごく普通のウスターソースやで。
 しかし、このメニューを見るとここでは醤油が最適やと言わざるをえんな。
 更に言うなら、これがトーストにサラダの場合なら塩コショウが一番やろな」
「………………」

しかし、目玉焼きだ。
食卓を見つめている奴は、実にとうとうと、真顔で、真面目に喋っている。

「まあ、何も味付けをせんと焼いてしもうて、
 あとで好きなもんかけて下さい言う君のスタイルは汎用性はあるな。
 この状況では褒めたってもええけど、塩コショウの時には通用せんから覚えとき」
「………………」

なんて傲慢な褒め方だ。こいつはこんな奴だったか?いや違う。
昨夜なんて、布団の中で実に可愛らしく俺の名前を呼んでいたというのに。
笑顔だって可愛い。それなのに今のこの瞳の鋭さはどうだ。

「まあええわ。冷めんうちにいただこか」
「………………」

ほとんど呆然としてしまっている俺を気にも止めず、奴は箸を取った。
目玉焼きには必要最低限の醤油をかけ、ほくほくとした様子で食べはじめる。
他の品にも手をつけながら、やっぱり日本人は和食やなぁ、などと呟いている。
どうしたん?食べへんの?と首をかしげて問いかける様子は、すっかりいつもの通りだ。

「…なあ、聞いていいか?」
「何?」
「別に、醤油とソースと塩コショウだけが選択肢じゃないんじゃないか?
 マヨネーズやケチャップをかける人も中には…」

そこまで言って俺はぎくりとする。瞳が、再びさっきの冷たさを取り戻していたのだ。

「俺に言わせると、そんなモンかけんのは愚の骨頂やね。
 目玉焼きをなんやと思うてんねやろ。そもそもマヨネーズは油と卵やで。
 卵と卵合わせてどうするっちゅーねん。ケチャップはトマトやけどタンパク質との相性が」
「ま、待て。分かった。俺が悪かった。もういいから」
「ようない!」

だん、とテーブルを叩いた拍子に食器たちがカシャンと鳴り
手付かずだった俺の味噌汁が少しだけこぼれた。
その音で奴ははっとした表情になり、我に帰ったようだった。

「………ご、ごめん。今のは忘れてな」
「………ああ…」

その後俺達は無言で朝食を終えた。
あれから何度も食事は作ってやっているが、目玉焼きを再び作った事はない。