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全然違う

眠れない。
眠くないわけではない。体は疲労を訴え思考は霞み手足は熱くなっている。
それでも眠りの気配は訪れない。
1523匹目のカラスを数え終わったところで抵抗を諦め、俺は寝台を抜け出した。

いつの頃からか、周りに人の気配があると熟睡できなくなっていた。
それは多少大きな家に生まれた者の宿命だったのかもしれないし、単にそういう
気質なだけだったのかもしれない。
だがそういう理屈を考える間もなく俺は部屋に刺客が現れれば跳ね起き、隣に誰
かが居れば身じろぐだけで目を覚ますような体になっていた。
この体質がいいものか悪いものかは分からなかったが、一人で眠る暗く静かな眠
りの安らかさに俺はいつも思考を放棄し暗いまどろみに身を任せていた。
この静かな眠りを妨げられてしまう位なら、どんなに愛しい相手であっても隣で
眠って欲しくは無いと。
そう、思っていた。
のに。

「…また来たのか」
「すいませんー眠れないんですうー」
「やめんか気持ち悪い。…大体一人寝が寂しいなんて、お前は一体いくつなんだ」
「あーあーきーこーえーまーせーん」
「…全く、しょうがない奴だな」

俺は隣で眠れるたったひとりを見つけてしまった。
何故そいつの傍でだけは眠れるのかは分からない。確かにそいつは俺が認めてそい
つも俺を認めた唯一無二の相棒である。しかし、そいつは可愛くも綺麗でも柔らか
くもない正真正銘の野郎だし、口は悪いし年上ぶるし何だか偉そうだしで安眠の為
の要素など全く認められないのだ。
だが、

「…おやすみ」

目を覆う手の暖かさと共に訪れる優しい眠りは、一人での静かで冷たい眠りとは
比べるべくもなく俺を暖めるので。
俺は今日もこいつの隣で眠りに落ちるのだ。