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脇役のジレンマ

「いい加減にして下さい」
小さなオフィスに苛立ちを含む男の声が響く。
「先輩が早く進めてくれないと僕の仕事まで遅れます。」
「だって…最近森本が口聞いてくれなくて仕事どころじゃ…」
「仕事なめてるんですか?勤務時間は勤務する時間であってそんな隅っこでめそめそする時間じゃないんですが。」
「うわぁ…社会人一年生に怒られた…」
古びたデスクに突っ伏したまま情けない声を出す男を見て、南はわざとらしく溜息をつく。
「で、何なんですか、森本先輩が口を聞いてくれない原因は」
「え?あぁ、こないだ森本といる時さ、偶然前の彼女に会って…」
へぇ、と関心なさそうな返事をする南にこいつは本当に聞く気があるんだろうかと思う。
「……でさ、その彼女と昔話でしばらく盛り上がって。なんかそのあたりから森本機嫌悪くなって、それ以来喋ってくれなくなった。」
南はというとコーヒー片手に携帯をいじりながら相槌をうっている。もうこいつ絶対聞いてない。
「どうせ俺の片思いだよ!もう絶対森本に嫌われた!」
「…森本先輩、今食堂にいるらしいですよ」
そう言うと南はずっといじっていた携帯の画面を見せる。
「森本先輩にはしばらくそこにいるようお願いしておきました。いい加減告白でもしてきたらどうですか?」
ぱたん、と携帯を閉じて仕事に向き直る。
「ま…マジで?」
「マジです。大体、先輩達どう見ても片思いなんかじゃないですから。」
「嘘…でも…」
「見てるこっちが苛々します。早くくっついて早く仕事片付けてください。」
「…ありがとう!行ってくる!本当ありがとう!南愛してる!」
言いながらバタバタと慌てて出ていくのを少し冷めたコーヒーを飲みながら見送る。
「僕も愛してますよ」
小さくなっていく足音に震える声で呟いた。