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ボケ×ツッコミ

「何やってるんだよ」
この台詞、いったい何度使ったことか。
どうして俺の意表をつくことばかりするのだろう、この男は。
「何って、風邪ひいたって言ってたからお見舞い」
「だからってお前、」
普通病人の部屋に真夜中に訪ねて来るか?
言いかけて咳こみ、おまけに熱のせいで立ち眩みを起こし俺はしゃがみ込んでしまった。
「とりあえず上がらせてもらうからな!一人暮らしは大変だろ」
言うや否や、奴は人の部屋に遠慮なく上がり込む。
今日は断る体力も気力もないので、俺も後に続いて玄関から狭いワンルームの部屋に戻った。

「よし、何か病人食作ってやるよ!!」
「わかったから静かにしてて」
よろけながらベッドに戻る。
横になり目を瞑っていると、熱い体に今まで意識していなかった音が響く。
やばい、思ってた以上に俺体調悪いのかも…。
音と意識が脳の奥で混ざり合い、脳全体を揺さぶる感覚がする。
閉めたカーテンの外で雨粒が窓を強く叩く音。
そういえばあいつ髪が濡れてたな。
あいつの足音と、冷蔵庫の扉が開き中を漁る音。
あんまり食べ物入ってないんだけどな。
あいつが歌う能天気な鼻歌。
お世辞にもうまいとは言えない、耳障りだ寝かせてくれ。

ガッシャーン。

そして、あいつが食器を割った音。
「悪い!」
ボケてる上に不器用で少し鈍くさいのは知っていた。
だが、俺はだんだん腹が立ってきた。
奴が二度目に皿を割った時、思わず上半身を起こし、
「いつもいつもボケてる奴だと思ってたけど、今日のこれは最早非常識の域だぞ。
うるさくて寝れない。何しに来たんだよ!」
痛い喉だが一息で叫んだ。
次の瞬間、ひやっとしたものに俺は全身を包まれた。
一瞬状況を理解できなかったがどうやら俺は、奴に抱きしめられているらしい。

「は?!何やってるんだよ」
「ごめん、風邪辛いんだろうと思って。でも無神経だった、もう大人しくしてるから」
そう言って奴は腕に力を込めた。
奴の体温が低く感じるのは自分に熱があるせいか、奴が雨にあたってきたせいか?
朦朧とする意識の中、俺は抱きしめられたまま横にされた。

何を言おうか考えていると、奴の呼吸が一定のリズムに変わってきたようだ。
寝息?もしかして最早寝てしまったのだろうか。
マジでこいつありえない…と起こして文句を言ってやろうと思った矢先。
「あ、電気消さなきゃな」
奴は突然起き上がって電気を消し、すぐ戻ってきて俺を抱きしめ、満足そうに再び寝てしまった。
どこからつっこんだら良いのやら。
まあ、喉も痛いことだし今回だけはツッコミを入れないでおいてやろう。
目を瞑ると体温差が心地良かったから。