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据え膳

ああ、ああいう時のジョーはこんな気持ちなのか。
目の前に眠る男、スペックは幼馴染、今年で二十二、新米サラリーマン、彼女なし、別れたばっかで傷心中。
対して俺、幼馴染、今年で二十三、彼氏なし、貧乏院生、目の前の男に片思い中。

引くべきか、いくべきか。両手で広げる四枚のカード。
『押し倒す』『引き倒す』『覆い被さる』『暴走する』
「全部一緒じゃねぇか!」
がっつきすぎです本当に以下略。ヤバイ。理性ヤバイ以下略。
「帰って来い、冷静なほうの俺」
ダメだろう、ここで手を出したらダメだろう、あれ、でも据え膳って手を出さないほうがダメなんだっけ?
東向いて笑うんだっけ? 食ってる間は喋ったらダメなんだっけ? 食うって! 何その性的な意味!
頭ぐらんぐらんです。混乱中です。彼が好きなんです。いやいや、落ち着け、だから帰って来い、クールビューティー俺!
「……とりあえず、写しとこう」
携帯の電池は残り一本だった。カメラモードにした瞬間に切れた。俺のスペック追加、属性ヘタレ。
現在の時刻、23時3分。終電時刻は23時43分。残り40分。どうすんの俺。再び広げる四枚のカード。
『押し倒す』『引き倒す』『暴走する』『抱く』
「だから、全部一緒だろうが……!」
言いつつ選択。結果は同じだ。もう知らん。ケセラセラの精神でいく。
さよならクールな俺、こんにちはケモノな俺。
「東ってどっちだっけ?」
つぶやいた声には恐ろしいことに返答があった。
「俺、初物じゃないけど」
……起きて、らっしゃったんですね……。
「寧ろ、最初から起きてた」
目の前の男が笑う。
「全部聞いた。……で?」
「でって?」
「据え膳。食わんの?」
両手を合わせた。いだたきますのご挨拶として。