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雨宿り

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前略。芹沢様。

君は元気でしょうか? 風邪などひいていないでしょうか? ちなみに、僕は元気です。それなりに
やっていますので、ご心配なく。……もしよかったら、ちょっと心配してくれると嬉しいけど、さ。

そういえば、最近、また新しくアルバイトを始めました。友達や縁遠くなった両親はいい加減に
定職につけと言うだろうけれど、フリーター人生が、僕には今のところ一番似合っている気がします。

芹沢。君は何て思うかな。こんな僕のこと。まだ、忘れないでいてくれてるのかな。
僕は今、君の住む(らしい)町で暮らしています。君のすぐそばで、君との思い出にしがみつく
ようにして生きています。
あなたはどこにいるでしょうか? 僕のこと、まだ覚えてくれているでしょうか?

馬鹿馬鹿しい話だと、我ながら思います。

もう何年前になるのかな。最後に二人で並んで歩いたのは。
あのとき約束したよね。
また明日って、約束したから。
それだけのために、君に会うためだけに、僕は生きているのです。

直接話したいことがたくさんあります。
「大好きだ」って、ふざけないで、芹沢、お前に言ってみたいです。
「愛してる」って、笑わないで、本気で伝えてみたいです。


……………
……

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住所も知らぬ相手への手紙につづる文章をとうとうと考えながら、時間は流れ過ぎていく。
そうやって時間を殺すことが、最近の僕の常套手段になりつつある。

雨降りの午後、傘を忘れた僕は小さな酒屋の前で一人たそがれる。
コンビニにでもいけばビニール傘くらい買えるだろうけど、そんな合理性に従うよりも僕は
情緒溢れる「雨宿り」をたしなんでいたかった。

雨に降られながらも、東の空はぼんやりと明るい。雨がやんだなら、もしかしたら虹が出るかも
しれない。そう思ったら、少しだけ、何だか気持ちが明るくなった。