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熟年夫婦

大恋愛の末、いくつもの困難を乗り越えて一緒になった攻めと受け。
時代的にも男同士というのは世間の目が厳しかった。それでも二人で暮らした。毎日愛し合った。
……そんな日々も今は昔。
かつての熱情は消え、今ではもう、受けにとって攻めは空気のような存在。
隣にいればいい、そう受けは思っていたし、攻めもきっと考えているんだろうと確信している。
相手のことは手に取るように分かってしまう。それだけの時間を共に生きてきた。
今更愛の再確認なんて気恥ずかしいし、かえって白けそうだった。

それでも知り合った日には、毎年ケーキを食べることが習慣になっていた。だから今年も用意している。
攻めはいつからか、その日を忘れるようになっていた。最近では受けが用意するケーキを見て思い出す始末。
それが少々気に入らない受けだった。自分だけ未だに思い出を引き摺っているようで。

だから帰宅した攻めが手に白い箱を持っているのを見て、受けは久しぶりに驚いた。
攻めは机の上の同じ店のケーキを見て、やはり同じように驚いた。
「お前店の場所忘れてるだろ。だから今年は俺が買おうと思って…」
そうなのだ。受けは、いつからか思い出の店の物ではなく、
近所のケーキ屋で買った物で済ませていた。それを忘れたと誤魔化していたのだ。
自分だけ事細かに覚えているのが悔しくて。

けれど今年はなんとなく買おうと思った。思い出の店のケーキを出したら、
攻めが驚くかもしれないと思いついたのだ。たまにはそんな気まぐれもしようかなと考えた。
攻めもひょっとして同じことを考えたのだろうか。今まで記念日を忘れたフリをしていたのかもしれない。
受けが店を忘れたことに腹を立てて――?

二人はどちらかともなく笑い、ケーキを食べ、久しぶりにベッドで眠らなかった。