※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

二人まとめて

握り締めた銃把が汗でぬめった。
不快な感触に眉をしかめ、さりげなく腿のあたりで手を拭う。
「緊張してるんですか」
見咎めてか、隣の男は囁くようにそう言った。
「二人まとめてあの世行き、ってのは勘弁して欲しいところだな」
こちらも状況が許す限りの音量で返す。
幾度か死線をくぐり抜けて今ここに立っているわけだが、
今度ばかりは生きて帰れる気がしなかった。
最悪、こいつだけでもなんとか。
弱気な考えがちらりと脳裏をかすめる。
「お供しますよ、どこまでも」
見透かしたようなタイミングで、相棒が口を開いた。
つられて声のする方を向く。
全身泥と埃にまみれた姿に、見慣れた小綺麗なインテリの面影はなかった。
乱れた髪の下で、目だけが剣呑な光を宿して爛々と輝いている。
こんな時に冗談をいうような男ではないから、さっきの言葉は本気なのだろう。
生きるも死ぬも運命を共にすると、そういっている。
だったら俺は、こんなところでくたばるわけにはいかない。
「覚悟が決まったかい」
できるだけ軽い調子で問いかける。
「一緒に死ぬ覚悟が、ですか?」
「一生俺の相棒でいる覚悟がだよ」
視線がかみ合った。やつは思いがけず笑ってみせた。
迷いのない、いい笑顔だと思った。
ざわついていた意識がすっと凪いで、五感がクリアになる。
遠くでまたひとつ、銃声が聞こえた。