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年賀状

2年になってやっと同じクラスになったその友人は、基本的にうるさい。
馬鹿のくせに、他人の領域にはズカズカ入るくせに、意外と本人は秘密主義だ。
ただ異様に人なつこくて明るくて、まぶしかった。
だからって、別に。ほだされたとか、そんなんじゃない。全然。

今も放課後の教室で、何が楽しいのか僕の眼鏡を掛けてみせ、
似合う?などとしきりに訊いてくる。
それが飽きたら今度は僕の髪でも弄り出すんだろう。好きにしろ。
いや、いつもなら足でも踏んでやるんだが、今の僕はそれどころじゃなかった。
12月も残りわずかという今日この日、僕はある使命を果たすべく、
タイミングを計っていた。
さりげなく、なるべくさりげなく…
「どうしたの?」
「ハァア?!」
「うわっ!…いや、なんか大人しいと言うか、それでいて鬼気迫ってると言うか…」
「…別になんでもない。そんなことよりお前、年賀状書いたか?」
「年賀状?メールで良くね?」
……。
こ ん ち く し ょ う 。
「え、なになに?なんか俺変なこと言った?」
こ、こいつ今日に限って空気読むなよ流せよ僕が恥ずかしいだろ!
「うるせぇこの礼儀知らずがあああああ!」
「えー?!何ギレ?!何ギレなの?!」
メールじゃ住所分かんないだろ!この馬鹿…!

数十分後、僕が貸していた数学のノートに自分の住所を書き込みつつ、奴が言った。
「あれ?そういやお前、俺んち来たことなかったっけー?」
ないよ。お前いつも僕の家には来るけど、お前の領域には入れてくれなかった。
だから訊きたかったんだろ。
訊くのに勇気要ったんだろ。
「お前の部屋って居心地いいからなぁ。入り浸ってたから気付かなかった」
悩んだ僕は何だったんだ。
悩んだ日数分返せ。何かで埋めろ。この馬鹿。
「な、大晦日、俺んち泊まんない?」
…考えてやらんでもない。

…僕の年賀状が届く前には絶対帰らなくては。