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あなたが最近目覚めた萌え
語りでもSSでも

満月の夜。二人の男が、とある縁側に並んで座っていた。
黒髪の男が葉巻をくゆらせ始めた。
彼は火を隣の男に渡そうとしたが、隣に座っている金髪の男は、柔らかい手つき
でそれを退けた。
「俺ぁいいですぜ、俺にゃあこれがありますから」
そう言って笑う金髪の手には飴玉が握られていた。
「前から少し気になっていたけれど、お前はひょっとすると、酒とか葉巻が苦手
なのかい」
黒髪が金髪の顔を覗き込んだ。
「苦手ってんのとは違います」
金髪は飴玉を口に放り込むと、黒髪の顔を見て寂しそうに笑った。
「味がしねぇんでさ。貴方方の仰る、辛い、酸い、苦い、後は何だったか忘れ
ましたが、とにかくそういうのが俺にゃあ分かんねぇんです。まぁ分かる方にお
話ししても、合点はいかないでしょうね」
黒髪は目を丸くし、数秒金髪を見つめた後、なるほど、と納得したように手を打った

「だから飴玉を食っていたんだな」
「はい?」
「確かめたかったんだろう?自分はものを食っている、自分は生きていると。そ
れでお前はいつも飴玉を噛んでいたんだね。あぁ、それは葉巻や酒よりも遙かに実
感が湧くだろう」
黒髪は金髪の返事を待たず、一人でうんうんと頷いていた。
金髪は、なぜ口にしたことのない思いがこうまで人に伝わるものだろうかと驚き
、それと同時に胸中に浮かんだ疑問を思わず口に出していた。
「貴方ぁどんな味がするんでしょう」
「ん?」
金髪はすぐに自分の口走った言葉を後悔したが、一度言いかけた手前止めること
もできず、難儀しながら言葉を続けた。
「俺ぁ、別に酒や葉巻の味を知らなくたっていいです。でも貴方のこたぁ、その

大切な友人だから知っていたい、という言葉を思いつく前に、黒髪が金髪の唇を
塞いだ。
「先程お前は一つ重要な味を抜かしていたね。『甘い』という味だ」
「そりゃぁ…どんな味でしょう」
問答ができる程落ち着いた心情になれなかった金髪は、俯いて小さく返した。
「それが今の味だよ。だからね、お前は次から『味』を知りたければ、こうして
私を食えばいい。もう独りで飴玉を噛む必要はない」
金髪にはもちろん常人の『甘い』は分からなかったが、不思議とその言葉が胸に
しっくり嵌る気がした。
何よりも、黒髪のその心遣いが嬉しいと思った。
「有難う御座居ます」
黒髪を見つめて笑った金髪は、もう一度『甘い』を味わうことになった。