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「勝手に決めんな!!」

そう言って奴は机に拳を叩きつけた。二人だけしかいない空間に机のきしむ音が響く。
こいつはモノに当たるような奴じゃない。分かっている、そうさせたのは俺だ。でも。

「何度でも言うぜ。もう俺の事は気にしなくていい。お前は、お前の幸せを掴むんだ」
「何で俺の幸せがお前の傍に無いと決め付ける!大体、俺が旅に出たのはお前と共に
歩む為だった!」
「そう、かつてはそうだった。でも、お前は旅をし仲間を作り世界を見、世界を救って、
知ったはずだ。幸せが、必ずしも俺の傍だけにあるものではないと。
…もうお前は、小さな村で俺と肩を寄せ合って縮こまっているだけの子供じゃない」
「それでも俺はっ…!」
「俺の夢にお前を引きずり込んだのは俺だ。だから、今開放してやる。…お前の幸せに
俺がいらないように、俺の幸せにも、お前はいらないんだ」
「…!」

目の前で拳が握り締められる。殴られるだろうか。それでもいい。
俺を殴って俺を軽蔑して、そして飛び出していけばいい。
世界を救った男にふさわしい幸せは、王都の華々しい街並や荘厳な城や、王女のやわらかな
腕の中にあるべきなのだ。

お前の幸せに俺はいらない。
俺の幸せにお前は不可欠だけど。

告げない言葉を断ち切るように目をつぶり、目の前の男からの拳を待つ。

硬い衝撃の代わりに包まれた温かさに涙を堪える事は出来なかった。