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受の命令(お願い)で女装させられて、更に白昼堂々デートさせられる攻

「巧ィー。ネズミーランド行こうぜネズミーランド~」
俺は、もう買ってしまった前売り入場券二枚で巧の頬をぺしぺし叩いた。
巧は鬱陶しそうに眉間に皺を寄せる。
可愛い顔が台無しなどと口に出したらまた怒られそうなことを考えつつ、
その眉間の皺すら扇情的に感じる俺は相当ヤバいとも思う。
巧が心底嫌そうにチケットを振り払った。
「嫌だ。何が悲しくて男二人でそんなとこ行かなくちゃいけないんだ」
彼は最高に険悪な表情だったがこれくらいでめげる俺ではない。
地道な努力を重ねに重ねて、漸く部屋の中まであげて貰えるような仲になった俺だ。

「でもさ、もうチケット買っちゃったんだよ。
お前ネズミーランド行きたいって言ってたじゃん、
お前の誕生日も近いしさ、
プレゼントだってことで俺と一緒にネズミーランド行ってください
でないとバイト代注ぎ込んじゃったので何もプレゼントできないんです
神様仏様巧様お願い致します」
とうとう俺は彼の前に平伏して頼み込んだ。
巧は目をそばめてそんな俺を見ていたが、やがて重々しく口を開いた。
「…分かったよ俺の負けだ。一緒に行ってもいいよ」

「マジですか!」
ばっ、と効果音がつく勢いで顔をあげた満面の笑みの俺に、
巧の悪魔のような笑顔が目に入った。
俺は、あれ、おかしいぞ、と半笑いになる。
この顔をした時の巧はとんでもなく恐ろしい、別の生き物になるのだ。
「ただしお前女装な、修二。男二人じゃつまんないから女やれ。
……出来るよな、高校ん時逆ミスで優勝したんだろ?」
巧が凄艶な笑みを向けた。
「え、巧なんで知って…!?」
そうなのだ、実は俺は逆ミスという名の、高校の女装コンテストで優勝した経験を持っているのだ。
こんな不名誉なこと、巧にだけは知られたくなかったのに…!
俺の言葉を無視して巧は続ける。
「勿論俺もオカマを連れて歩くのは御免だ。
というわけで当日は完璧に女になってこい!
駅でお前見て駄目だと思ったら、即俺は帰るからな。
勿論女装してなくてもだぞ」
普通は、ここでじゃあいかない、と言うのだろう。
せめて悩むだろう。
しかし俺は即答した。

「頑張ります!」と。

我ながら本当に救いようがない。

当日の朝、俺は鏡の中の美女に正直戦慄した。
化粧品は100均、化粧の仕方はネットで調べただけ、
ウィッグと服だけは一応高校の頃の女友達から借りたものなのだが、
それでも人とはこうまで変わるものなのか。
身長が168しかない(といっても巧よりは3cm高い)俺は本当にちょっと背が高いだけの女子大生にしか見えなかった。
これなら、と思って、駅で巧を待つ。
現れた彼は、驚愕に目を見開いた。
「……え、お前、本当に修二…だよ、な…?」
「やだぁ、今日は修子でしょっ」
信じられない、と俺の顔をじろじろ見ている巧に、おどけて鼻をつついても、彼は呆然としたままだ。
俺はヤバい完全に外した、やっぱりキモいよな冷静に考えたら、と本当に今更ながら後悔に襲われる。

「や、ご、ごめんごめん、本当にしてくるとかまじないよな完全に外したわ!俺、家かえ……」
最後まで言い終わらないうちに、改札へ向かおうと踵を返した俺の手を、巧が掴んだ。
驚いて振り返ると、巧は強い力で俺を入口の方へ引き摺っていく。
「巧、ちょっと待てよ!てか、手、恋人繋ぎ……」
俺はうろたえて情けなくなすがままだ。
そんな俺に巧が男らしく返す。
「その格好のお前となら、手繋いだり食いもん分けあったり、
キスしたりしたって変じゃないだろっ」
巧は前をむいたままだったが、真っ赤であろうことは用意に想像出来た。
うなじが桜色に染まっていたからだ。
「え、ちょっ、巧…!?」
しかし今の俺にはそれをからかう余裕はない。

ちょっと待て、今、キスとか言わなかったか、キスとか!
そこまでしてくれるつもりなの!?そ、そんな心の準備が…!

倒れそうな幸福感の中、いつもは巧のほうが恥ずかしがり屋なのに、
いざとなるとむしろ俺の方が意気地無しなのだと、初めて知った。