※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

フォーウ

「いいか、基本的なことだ。ちゃんとまじめに答えろよ」

念を押すように、出来る限りの怖い顔で言う。
それなのにやつは、はいはい、と語尾に音符がつきそうな口調で答える。
このやろう、能天気な顔しやがって。

「今どき英語で数すら言えないやつなんていねぇっつーの」
「しょうがねーじゃん。俺は英語全然ダメなんだもーん」
「可愛い子ぶるな、気色悪い」
「ひっでぇ~」

おどけた調子で言うことか。
しかしこのおどけた調子もいつものこと。
構っていてもきりがないから、その言葉は飲み込む。

「ほら、これ。左がスペル、右が読み方。この通り読め、そして暗記しろ」
「紙に書かれたって発音は分かりませーん」
「俺が聞く。間違ってたら訂正するから」

ダメな生徒を持つ教師とは、ここまで疲れるのだろうか。
生徒でありながら、苦労してるであろう教師に同情の念を抱く。
先生頑張れ、ファイト、頑張れ。
いや、エールを送ってる場合じゃない、今はとにかくこいつだ。

「さっさとやれ」
「はーい、えっとまずは…ワーン」
「違う、one」
「ぅぉあーん」

…ふざけてるのか、本気なのか。
どちらか分からない。次の数字を読ませて判断するか。

「次」
「とぅー」
「次」
「とぅりぃー」

あぁ、そうか。これがこいつの精一杯なのだ。
なら著しく間違えてるわけじゃいのだ、怒鳴るのは可哀想である。
発音の悪さは聞かなかったことにして、とにかく英語で数字が言えるレベルまで上げることにする。

「次」

そう妥協して、俺が次を促した瞬間。
あいつは突然立ち上がり、両手を広げ、そして。


「フォーウ!!」


ポーズを決め、そう叫んだ。
…頭を抱えたくなる。
確認しよう、俺は、こいつに、勉強を教えてるんだ。
それなのに何で、芸人リアクションをされなくちゃならない。
そんな俺に気付いてないのか、あいつが俺を見て、どうだった?としきりにたずねてくる。

「おもしろかった?お前こういうのなら笑ってくれるかなって思ったんだけど」

……こいつ。こいつ。こいつぅぅぅぅぅ!!!

「もう容赦しねぇっ!!そこに座れ!!真面目にやるまで帰さねぇぞっ!!!」
「うわぁい、それは願ったりかなったりぃー」
「嬉しそうに言うな!!俺は願ってもないしかなってもねぇよこのやろう!!!」

俺を見てへらへら笑いっぱなしの姿を見ながら、俺は腹の底からやつを怒鳴りつけた。