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裏切り者の烙印を押されても

裏切り者、と、倒れ伏した俺の耳元で声がする。
もしこれが血の雨降り注ぐ戦場で、生きて帰ろうと硬く誓った戦友を庇って倒れたとかいうシチュなら格好もつこうというものだが、生憎というか幸いというかここは都会のぼろいアパートの一室であり、俺を瀕死に追い込んだのはおおよそ人なんて殺せない柔らかい物体だったり。
…あーもうそんなにぎゃんぎゃん怒鳴るな馬鹿。お前の重低音の声は好きだが、頭…いや、腹に響くんだ。
残り僅かな体力を振り絞ってトイレへ駆け込む。本日の俺、朝から一人でリバース祭。上から下から出すもん出しまくり。
…だからうるさい。プリンアラモードなら責任もってまた買ってくるって。あんなコンビニのじゃなくて駅前のケーキ屋の旨いやつ。
くってりと便座にもたれて、やっとやっとでそう返す。
…何?そういう問題じゃない?まずは、一緒に喰おうと約束して楽しみにしていたプリンを勝手に喰った謝罪をしろと?
やなこった。謝罪ってのは悪い事したって思う時にするんだよ。
そう返したらトイレの扉が強く殴られた…もしかしたら蹴ったのかもしれない。ただでさえボロいのに壊れたらどうするんだ。
…でもまぁ、ああして怒れるというのは元気である証拠であり、その元気さが奴の唯一の取り柄であり魅力なわけで。
なんて考えていたら再度リバースの波、到来。畜生、意外としつこいぞ、うっかり常温放置で変質したプリン(二人前)め。
…何?約束してたのに勝手に食べたからバチが当たった?
…まぁ、そういう事にしておけ。
本当は冷蔵庫にしまおうとして異変に気付いたさ。
楽しみにしていたプリンが食えないと分かればきっとお前は落ち込むだとか、生来の貧乏性で「まだ平気かも!」とか喰いかねないとか、食い物を捨てれば本気で沈み込むだとか、そんな風に心配するのは俺のキャラじゃないし。
何よりこんな暴挙に出た原因が『常にお前の元気な姿を見ていたい』なんてアホな考えだった、なんて事知られたらこれまで培った俺様キャラが大崩壊するし。
だから、これが一番の解決策。真相は闇に葬る。例えお前に裏切り者の烙印を押されれても。

…なんて、リバース後に涙目で咳込みつつ、せめて心中だけでは格好をつけてみたりする情けない俺なのだった、まる。