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君が代

体育館で彼は言った。君が代を聞いたことがないのだと。
これからこの地域に越してきて初めて聞くのだと。
唖然とした僕を見つめて広島出身なんだ、と笑った。
その歌は彼の親や彼の教師、彼の故郷によって禁忌とされ、どのような歴史があり、
どんな意味でどんな風に国民が歌ってきたかを知っているからこそ歌えないし
絶対に歌いたくないのだと言った。
僕はそのような環境には育っていないし、ましてやその歌を憎んでもいない。
何故歌うのかもその意味も考えたこともない。
無知な自分を環境の違いだ、と恥じもしなかったが、普段共にふざけあい笑う彼の真剣な眼差しに小さな隔たりを感じた。
そっと隣にいる彼をみるとその顔はぐっと口をつぐみ、まっすぐ前を見据えていた。