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囚人のジレンマ

愛しい貴方へ。

真円だった月が、半分に欠けました。僕らの処刑が執り行われるという新月まであと半分です。

『自分が間違っていた』と一言告げさえすれば、晴れて自由の身になれる事は保証されています。二度とお互いに会えなくなるという一点を除いて。

僕らがいかに不道徳か、非を認め改心しろと説いていた父親も、無駄と悟ったのかここ三日程姿を見せません。
僕は、貴方を愛した事、貴方に愛してもらえた事を決して後悔も恥じもしていません。
だから、貴方と重ねたこの唇で貴方との愛を否定するような真似はどうしてもしたくないのです。
例え命を絶たれるとしても。

……けれど、貴方はどうなのでしょうか。
約束してくれましたよね。『新月の日に一緒に逝こう』と。
命が惜しくなったりしていませんか?
もしかして、僕らの在り方を否定してでも、生きる道を選びたくなりましたか?
……貴方は、僕を裏切りますか?

そんな事を考えてしまった自分が腹立たしくて情けなくて、けれどどんなに振り払っても不安は纏わり付いてきて涙が溢れます。
『裏切られる前に裏切れ』という悪魔の囁きと、貴方を信じる心がぶつかって、胸が裂けそうに苦しい。
貴方のいない孤独と寂しさがどんどん負の感情を増幅させ、新月を待たずに気が狂いそうになる。

もう結果なんてどうでもいい。誰が死んで誰が生きようとも関係ない。
ただ、今すぐ貴方に会いたいいです……兄さん。