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青信号×赤信号←黄信号

「お疲れ様でーす。お先に失礼!」
「…お疲れ様です」
赤信号の手を繋いで脳天気に挨拶をする青信号に呪詛を唱えるように
黄信号は挨拶を返した。
深夜になると交通量が減るこの道路では
黄信号のみが点滅していれば信号としての役割は事足りる。
交差点ではなく合流地帯になっているために
置かれている信号なんて大抵どこもそんなものだろう。
日中は青信号や赤信号と比べてあまり仕事がないのでこの深夜が
黄信号にとって働き時だ。
それには文句はないが、青信号が赤信号の手を繋いでいるのにはもの申したい。
普段なら素っ気なく青信号の手を振り払う赤信号も今日ばかりは思いため息をついて上の空だった。
赤信号のため息の原因は信号無視の結果起こった交通事故のせいだ。
急いでいたのか白の乗用車は信号が黄色になってもスピードを緩めず、
むしろ増す勢いで道路を突っ走り赤信号になっているにも関わらず突っ込み
事故を起こした。
死者が出ることこそ無かったが救急車がきたりパトカーがきたりで
片道2車線しかない道路は渋滞を起こした。
信号無視をした車が悪いと誰が見てもわかることだが赤信号は
『もっと自分が光っていたらこんなことは起こらなかったかもしれない』
そう気に病んでいた。
青、黄、赤と並んだ信号の中で赤信号が一番の古株電球だったせいもあり
確かに青信号や黄信号に比べて若干赤信号は光が弱い。
しかしそれは3つ並んで光ったときにわかるもので
交通状態に影響を及ぼすほどではなかった。
真剣に引退を考え『やっぱりLED信号とかの方が世のため人のためだよな』と呟く赤信号に
必至で黄信号はそんなことはないと言い張った。
確かにメリットは多いが、そのための工事費用や
工事のために通行止めになってしまうことなどを考えると自分たちだって大事な存在なのだと。
赤信号は苦笑を浮かべ黄信号の頭をポンポンと叩き『そうだな』と笑ってくれたが、
黄信号の説得に納得していないことは黄信号自身が一番よくわかっていた。
(絶対ぜったい、俺の方が赤信号さんの気持ちがわかるのに…!)
帰って行く青信号と赤信号の背中を見つめながら黄信号は歯がみする。
青信号が直接の原因で事故になることなど滅多にない。
黄信号が夜中に一人仕事をしていると、注意して進んでほしいと思いながら
点滅しているにもかかわらずつっこんできて事故に遭う車もいる。
(青信号なんて、ただ進めって指示するだけで直接事故になる原因になることなんか無いじゃないか!)
青信号は進めではなく進んでもいいという表示だが
黄信号にとっては青信号などどうでもいい。
(なんで俺じゃ赤信号さんの気持ちを楽にすることができないんだろう……)
赤信号の隣にいるのは青信号じゃなく自分なのに。
事故が起こったとき赤信号の一番近くにいたのは自分なのに。
青信号と赤信号の関係を知っていながらも複雑な気持ちを押し殺すことなんかできない。
その晩黄信号はしばしば点滅をすることを忘れ点灯し続け、何台かの車を惑わせてしまった。
公私混同だとへこんだ黄信号に青信号は苦笑いを浮かべ
赤信号は『一緒に引退するか?』と黄信号の肩を叩いた。
(一緒に……引退?)
黄信号の中では一つの三段論法が出来上がっていた。
●公私混同をしてしまった自分と自責の念で引退を考えている赤信号さん

●青信号は特に問題を起こしていない

●引退をするなら自分と赤信号さんの二人
「赤信号さんと一緒ならどこでも行きますよ!」
短絡的な思考の結果、へこんでいたのが嘘のように明るく煌々と輝きながら黄信号は答えた。
その隣で
「LED信号に変えるなら、3つ揃って引退だと思うんだけどわかってんのかな」
ポツリと呟いた青信号の言葉は、赤信号に一生懸命話しかける黄信号の耳には届かなかった。