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兄(高2)×弟(中1)で無理やり→→→3年後下克上

若気の至りという言葉がある。自分の悪行は全てそれに内包してほしいな、と希望的観測をふと過去を思い出したときに考えることがある。
3年前の自分の誕生日に友人達に祝ってもらい、未成年にも関わらず飲酒をした。
酒を飲んで酔っぱらったあげく『今日は両親が旅行でいなくて弟が一人で寂しがってるから帰るぜ!』と普段なら家族思いの一面なんか決して見せたくないから言わない台詞をぶちかまし、ぎりぎり日付が変わる直前に帰ってきた自分を
弟は待ってましたとばかりに玄関に出迎えてくれた。
居間に並べられたケーキとケン○ッキー。スポンサーの両親がいないのだからケーキがカットケーキであることも、フライドチキン(4ピース)が晩ご飯であることも当然だ。俺はただただ中学生の弟が少ないお小遣いで買ってくれたのだ、という心遣いが嬉しくてたまらなかった。
しかし嬉しさのあまり弟を抱きしめたのがまずかった。いや抱きしめるのはまずくない。
酔っぱらっていたせいで、勢いよく弟にぶつかるように抱きしめ自分より小柄な弟がそれを支えきれるはずもなく後ろにあったソファに二人で倒れ込んだのが悪かった。
抱き込んだ身体からは風呂上がりのせいか清潔な香りがふんわりと漂った。
こぼれ落ちそうなまるい目と視線が合い、驚きのせいで半開きになった唇に視線が吸い寄せられた。

それからの行動は思い返すのも恥ずかしいし、酔っていたせいでしっかり覚えていませんというのが正直なところだ。
酔っぱらっていたら何しても良いのかと問いつめられたら返す言葉もない。ただ、
「お兄ちゃん…何でこんなことするの………?」」
そんな戸惑った声だけはしっかりと覚えている。
悪いことをしたら自分に返ってくるんだなと思う。法律を守らなくてすみませんでしたと誰に謝れば良いのかわからず翌朝狭いソファ上で一人目が覚めたときに、弟がかけてくれたらしいブランケットを握りしめ心の中で謝った。
弟に謝るべきなのか、いや擦り合う程度なら兄弟間でよくするよなたぶん。うんするする。たぶん。
自分に都合の良いように折り合いを付け、どうやら俺がソファを占領したせいで自室のベッドで寝ていたらしい弟が部屋から出てきたときに何も言わなかった。
何か言いたげな目をしていたのを無視して、弟が買ってきてくれたフライドチキンを暖め、一つだけのケーキを食べた。

高校二年だったこともあり、受験があるからと言って予備校に通いできるだけ家にいる時間を少なくした。
夏休みは毎年家族で旅行に行っていたがさすがに今年は一緒に行けない、そう言ったら弟は
「お兄ちゃんがいないなら、ぼくも行かない」
そう言ってふてくされたそうだ。
予備校の合宿があったせいでその話をしているところを見ていないから弟がどんな気持ちでそれを言ったのかはわからない。
大学は家から遠いところを選んだ。一人暮らしができるくらい遠く。
家から逃げるように出て行く自分の背に視線を感じたが振り返れなかった。

家を出てから2年。盆や正月にも帰らない自分に母親から帰還命令が出た。
曰く『弟の誕生日にうっかり旅行の予定を入れてしまい、今からキャンセルすると取り消し手数料もかかるので代わりに祝ってあげて』だそうだ。
丸々2年も会っていない自分なんかに祝われるのは弟も嬉しくないだろう、そんな本心半分引け目半分から出た言葉に
「あんたに久しぶりに会えるのをすごく喜んでるわよ」
そう返された。
自分の中では2年前のままで弟の姿は止まっている。ときおり母親からは弟の背が伸びたことや、ご飯をたくさん食べることなども聞いていた。
だがあんなに小さくて可愛らしかった弟が食べるといってもたかがしれているとそう思っていた。
だから弟の誕生日当日に実家に帰ったときには目玉が飛び出るかと思った。
実家の呼び鈴を一応鳴らし、ドアを開け玄関にいたのは自分が見上げるような背の男だった。
もちろんそれは上がりかまちのせいもある。けれどそれが無くても身長差はかろうじて自分の方が高いだろうかという程度だ。
家を出る前はもっと小さかった。『おかえり』と照れたように笑ったが、その声もなじみのない低い声になっていた。
「帰ってくるの、すごく楽しみにしてた」
わざわざ鞄を持ってくれて居間の方に運んでくれた。ソファに座っててよ、お茶入れるからという言葉に従い思い出深いソファに腰掛ける。

グラスに入った麦茶を手渡しながら弟は隣に座った。
運動部のせいか、自分とそう背は変わらないのに体つきが違うと思う。ああこれは俺よりでかくなるなと思うと何故か過去の罪悪感がやわらいだ。
小さな弟に俺がした事実は変わらないにも関わらず、こんなにでかくなったんならあの程度のこと忘れてるよな、と思ってしまう。
「お前、今日何食べたい?」
バイト代を下ろしてので財布はそこそこ厚い。一流レストランのフルコースなんてことを言われない限り、弟が満足できるくらい食べさせてやれるだろうと思う。
「何が?」
「今日お前の誕生日じゃないか。晩ご飯、俺がおごってやるよ」
実のところ弟に会っても罪悪感だらけで会話もまともにできないと思っていたが、まるで別人のような弟相手に気負いなく話すことができた。
しかし俺の質問に弟は答えずにっこりと笑って俺を突き飛ばした。
いきなりのことに満足に受け身も取れずソファの下に転がる。
下にラグが敷いてあって良かった。そう思うのと同時にかなり驚いていた。弟の片手一本で転がる自分にも、弟のいきなりの行動にも。
「お兄ちゃん」
笑顔を浮かべたまま硬直してる自分の上に弟がまたがるようにのしかかってくる。
笑った顔を見ると、ああこいつは確かに弟だと思った。細くなった目元が昔のままだ。
「お兄ちゃんが食べたいな」
するりと顎に手がかかり真上から笑顔のまま覗き込んでくる弟の目から視線が逸らせない。
一体何を考えているのか。そう思ったが、きっと理由なんかないのだろう。自分が弟に手を出したときと同じように。
そうやってまた自分の都合の良いように思いこみ、焦がれるように自分を見つめる視線から逃げるべく目を閉じた。