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党首×捕手

『八神海渡、八神海渡、海を渡る八人の神。もうこりゃ縁起もんです。
しかし皆さん、名前負けするような男ではありません。
お手々繋いで幼稚園…そうかれこれ30年近くの腐れ縁ですが、
一度たりとも約束を反故にしたことのない誠実な男です。
高校時代デッドボールを受け、足を打撲した私を担いで医者まで走ってくれた、そんな優しい男です。
お嫁に貰ってもらいたいほど…あっいや女房役はグラウンドだけで手一杯でして、
それは未来のお嫁さんにお任せしましょう。
また皆さん、……』

私は横で微笑みを浮かべながら、嫁という言葉にあの日の自分を思い出し真っ赤になった。


和人とゆっくり会ったのはもう3ヶ月も前だったろうか。
お互い忙しくいつもこんな調子だ。
あの日、逞しい和人に何度も貫かれ追い上げられ快楽の淵に突き落とされた私は
「そろそろお嫁に貰ってくれてもいいのに。
 いつもおまえと一緒にいたいんだ」
積もり積もったストレスと快楽の余韻の為せる業とはいえ
正気に返れば恥ずかしさにいたたまれないような言葉を紡いでしまった。
「俺はいいよ?いつでも嫁に貰ってやるさ。
 だけどプロの投手になる夢を捨てて政治の道を志ざしたのはおまえだろ。まだまだ先だ」
「政治家の引退って遅いの知ってるだろ?そんなの待てない。」
「一党の党首が男と暮らしてるなんて許してくれるほど世間は甘くないぞ。
 先だっていい。おまえが隠居してゆっくり暮らせる日まで俺は待ってるよ。」
そう言って子供をあやすように背中をトントンとして抱きしめてくれた。
ただの弱音、おまえにだからこその甘えだと分かっているんだろう。
それでも優しい言葉が嬉しかった。

党首とは言っても3年前に立ち上げたばかりの若い党だ。
派閥抗争に嫌気が差した若い議員、既成の党の体制に合わない議員、
国政に新しい風を起こしたい同志で立ち上げのだった。
今回の総選挙の応援演説を和人に依頼するのは抵抗があったが、私たちが親友だと知る周りの者たちからは、
東海ランナーズの正捕手であり昨期の打率トップでもある真鍋和人の力を借りない手はない、
と押し切られこの現状だ。


『明日の投票日には是非「八神海渡」とお願いします。
政治の事は疎い私ですが、万一手抜きしようものなら親友として一国民として容赦はしません。
必ずや私が、彼が真っ直ぐな道を勧めるよう支えていく事をお約束します。
まぁ酒を飲んだり愚痴聞いたりしかできんですけどねぇ。
皆さんのお力をこの日本新風クラブの八神海渡に是非是非貸してやって下さい!』

そうだな。どんな時もおまえは私の支えだ。
会えるのはたまにでも幸せだ。
のんびりゆったりするのはまだ先でいい。