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三角関係

「…ここにいろ、とは言わないんだな」

小さな呟きが聞こえた。
背中のぬくもりが動いて、温度が一気に下がる。彼が起きたのだろう。
数時間の眠りは行為の甘ったるい余韻さえ残していない。
俺は薄く目を開けて、冷え切った壁の木目に背後にいただろう彼の行動をただ思い描いた。

「お前が言えば、俺はいくらでもいてやるのに」

服を着込みながら、相変わらず淡々とした口調をこぼす。
俺は何も返さずに眠った振りをして、窓際に佇む彼の幻影を追う。
部屋の中にゆっくりと光が差す。昨日からの雨は止んだらしい。

「…酷か。そんなことを尋ねるのは」

床の軋む音、踵を少し蹴り付ける癖のある足音、蝶番がきぃと鳴って扉がばたりと閉じた。
彼が外に出ると同時に入ってきた晩冬の空気が、俺の背に縋っていたぬくもりさえじわじわ奪い行く。

「ここにいろ言うても、アイツを結局捨てられへんのは…誰や」

それは俺も同じだった。アイツの元に行く彼を、やはりまだ、恋しく想う。
長年親しくしてしまうと、知りたくない相手の本心まで掴めてしまうのはどうしてだろうか。

「いっちゃん酷なんは、誰や…」