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据わった目

「今お前何してるんだ」

2ヶ月ぶりのその第一声のせいだと言いたいけれど、確かに先に悪い態度をとり始めたのは俺の方だ。
「大学だけど。可愛い女の子と昼ー」
等と続けたのだから。貴方が嫌がるのを知っていて。
そのあと俺は完全に拗ねた態度しかとらず、貴方が謝ったり、機嫌を取ろうとしたいけれどそんなのは苦手なので困ったりするのを放っておいた。
厳つい風貌の貴方が途方にくれてるのを少し可哀想だなと思ったりしたけれどやっぱり放っておいた。
貴方だって好きでいつも音信不通になる訳じゃないとわかっているのに俺は冷たかった。
特殊な仕事に就いている貴方を好きになってしまったのだから仕方がないのだ。
ただ今回は長すぎて俺は寂しすぎたあまり混乱してたんだと思う。
そんな今週だったよね。


で貴方の眼が今据わっていて、正面でその真顔の迫力に俺は全身を射抜かれたみたいになっている。



「辞めるよ」

「は…?」
「引退する」
「いやいやいやいや、え?ご冗談…」
茶化す方向にちらりと行きかけて一瞬諦める俺。
眼がマジで据わってる。
この状況でまずこれがマイ引出しから出てくる対応なの?
俺なんかとこの人とは、人間としてのストックに差がありすぎるなあなんて呑気に考える俺。
「いいんだ」
貴方の言葉はいつも重さみたいなものがあって、薄っぺらな言葉を空費してばっかりいるような俺のどこがそんなに良いのか。
「透、」
「俺の携帯の番号も登録してない癖に」
貴方の身に何があっても、俺に辿り着かないようにしているのを知ってる。
俺はく全く減ってない貴方のカップを意味なく見つめる。
「ああ、だからもうこれからは」
「いいです、ずっと直打ちしてりゃいじゃん」
「いや、お前が居なくなるくらいならいいんだ」

ああ俺はなんて事言わせてるんだろう。この人に仕事なんてと言わせるなんて。そんな苦しみを与えていて俺は平気でいたなんて。今週。

「…ずっとかちかちやって掛けてくれればいいじゃん」
「私は真剣に言っているんだ」
「貴方が真剣じゃない時っていつなのさ…というか頭かたいなあ!ずっとそのままでいいよ、そうしてる貴方が良いんだもん、仕事辞めたら清見さんじゃないじゃん。普通のおじさんじゃん」

「…『普通の女の子』みたいに言うんじゃない」
「言ってない!てか女の子とはかけ離れてる」
「そうわかっているならわざと可愛い女の子の話をするのだけはやめてくれ」
本当にしょんぼりとそう言う精悍な人は俺のタイプのアイドルに全く似ていない。フリフリ着ないし。
でもこれからこの恋人に謝るために俺は姿勢を正す。