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イカ×タコ

「よう無事だったか、タコ」
「その呼び名、やめてくんないっすか。手賀木さん」

悪りい悪りいと悪びれなく笑い、手賀木さんは俺の頭、正確にはカツラをぐしゃぐしゃにする。それを無視しながら、俺は今回の報酬のアタッシュケースを無造作に放った。

「にしても、タコは本当化けるな。この前の筋肉バカの姿と今のインテリが同じ奴とは誰も気づかねえよ」

アンタ以外はな、そう脳内で呟く。いわゆる"普通の世界"で、自分の特技を自己満足に披露していたのは、もう随分前だ。

『なあ兄ちゃん、タコって知ってっか?他の生物に化けては、周りに溶け込んで、体の形まで変えちまうんだ』

安らかな深海に留まっていた。

『兄ちゃん。普通の世界つうのは、つまらねえと思わねえか?』

急流や危険ばかりある海中を泳ぐ気なんてなかったのに。

「つか、手賀木さんは化けねえのかよ」
「義手まで誤魔化すのは面倒だ。適材適所つうのが世の中にはあんだよ」

まあでも、真田の為には、化けてやらんこともねえかもな。

右頬を冷たい右手で左頬を温かい左手で撫でられる。
その仕草に心まで搦め奪られたのは、随分前だ。
強い目から逃れられなくなったのは、随分前だ。

「成功の祝いに美味いもんでも食いに行くか、タコ」
「、皮くらい剥がさせて下さいよ」

乱れたカツラを外しネクタイを緩めながら、札束を持った手賀木さんの後を追いかけた。