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殺したいくらいの愛情

喉から言葉が出かかった。
思うさまに罵詈雑言を浴びせ、罵り、蔑み、殴りつけてやりたかった。
それを止めたのは、皮肉にも目の前でうなだれている奏太の言葉だった。
「ごめん。ほんと、反省して……」
「反省って、何のだよ」
「いじめ、の事」

目は泳ぎ、顔色も悪い。
当たり前だ。
今、彼の命運を握っているのは、表情を無くして立っている隼人だからだ。
隼人の手は、奏太の腕をしっかりと掴み、ギリギリと締め上げる。

「俺、別にお前の反省なんていらないよ」
「じゃあなんで!?」
「ただ憎い。それだけだよ」

手を離せば、奏太は落ちる。
自分が招き寄せておいて、それが少しだけ惜しくなる。

「や、めろ!だったらお前だって、俺が死ねばいいって……!」
「思ってるよ、もちろん。この手を離しても、いいくらいだし」
「じゃあ」

なぜ、と問う奏太に、隼人はぐいと体を引き寄せた。

「一緒に行こうか?何て言わないよ。飛び降りるなら、いっそ見つからない所でひっそりしろ」

隼人は、以前奏太から酷いいじめを受けていた。
その一年を、隼人自身決して忘れる事はない。
なのに、心も体も壊した張本人は、自分と同じ目にあった途端、数日で学校の屋上から飛び降りようとしていた。

それが、隼人には許せなかった。

「復讐もさせてくれないなんて、それこそいじめだ」
「復、讐?」

格好いいと評判の顔が、悲痛に歪む。
それだけでも、隼人の中で溜飲が下る。

「そう。あんたは憎いけど、この手離したら、憎む事も復讐する事も出来ない。だから、生きててよ。勝手に死なないで」

奏太がむせび泣くと同時に、隼人は少しだけ安堵した。
図らずも、彼の命を救った形にはなったが、隼人にしてみればこれからが本番だった。
それでも、用意していた罵詈雑言は、しばらく封印となった。