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十代の性欲なめんなよ!?

先生好きです愛してます、なんて言葉も冗談だと思っていた。
真面目で優秀な生徒会長も、そんなおちゃらけた冗談を言うんだなあ、と。軽く考えていた。
だから今までずっとハイハイ、とかわしてきたのだけれど、どうやら彼は本気だったようで。
教材室で書類整理をしていると、その、なんだ。……押し倒された。

「前野っ、てめ、離、せっ!」
「やだ、絶対やだ。先生が本気で考えてくれるまで離さない!」

いつのまにやら敬語も解除されていた。眼鏡越しの瞳はまるで獣のようにぎらついていて、正直怖い。
通常時に力比べをしたら確実に勝てる自信はあるけれど、机の上に倒された状態にくわえ、
身体全体で覆いかぶさってくれば、流石に無理だ。身長は目の前のコイツのほうが高いし。
灰色のデスクに縫い付けられた手も動かない。前野は切れ長の瞳でじっと見つめてくる。
目をそらしたら負けな気がしてじっと睨みつけていると、何かに耐えかねたのか、わざとらしい舌打ち。

「……なんだよ」
「……あんた、ずっとずっと俺が好きだって言っても冗談だと思い続けてきただろ?」
「そりゃ、まあ」

苦い笑み(というより引きつった笑い)を浮かべた前野を見ながら、唇を尖らせて返す。
すると、また舌打ちをして、ああもう! と唸った。

「冗談で男に好きとかいえるわけねーじゃん!冗談で泣きそうになるわけねーじゃん!
 バカじゃないの本当に!授業中お前は集中してて偉いなっていってくれるけどさ?!
 ぶっちゃけんなことねーよ?!アンタが黒板書くたびにケツ見てムラムラしてるし、
 髪柔らかそうだな触ってみたいなって思うし、肌綺麗だな顔綺麗だなって思ってるよ!
 ぶっちゃけアンタ泣かせるくらいヤりてーと思ってるよ!十代の性欲なめんなよ?!」

ほぼノンブレスで、捲くし立てるような言葉。内容が内容じゃなきゃ、……状況が状況じゃなきゃ、
拍手を送ってやりたいほどだ。なんだか論点が大幅にズレているように思えるけれど。
……それはきっと、彼に余裕がないことを、あらわしている。俺は何かリアクションをしなきゃ、と思うけれd、
うまくまとまらない。だってそうだろ。ハッキリと同性に『お前は性欲の対象だ』と言われた。

 気持ち悪い、と一蹴するのは簡単だ。簡単、だけどさ。俺の顔、すっごい熱い。
内心がすぐさま表に出てしまう自分をこのときばかりは恨みたい。
考えるまでもない。俺の顔はおそらく真っ赤だ。前野は息を乱したまま、俺の顔を見て眉間に皺を寄せた。
深く深く息をついて、手首の拘束を解いたかと思えば、俺の顔の横に頭を置いた。

「なん、まえの、なに」
「……先生、可愛すぎ……」
「なっ……!」

16歳だか17歳くらいの男に可愛いと言われ、嬉しいと思う今年31歳の男がどこにいるだろうか。
……申し訳ない、ここにいる。

「すっごい可愛いよ、今の先生。ただでさえキレーな顔してるのに、目うっるうるで顔真っ赤で。襲いたい」
「前野、お前、こんなにバカだったのか」
「バカにもなるよ。それくらい、先生のこと好きだっつってんの……」

すぐ隣で、大きな溜息が聞こえる。
多分このバカは気づいていない。今の一言が、どれだけ俺の心を揺り動かしたのか。
気づかなくても、いいけど。