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薄くなったカレンダー

別れの時間が、近づいている。


 野江が今月末に転校するんだ、といったあの日からもう2週間が経つ。
祖母の家の日めくりカレンダーはどんどんと薄くなっていって、
それは同時に彼との別れが近づいていることを示していた。
 2週間前のあの日から、俺と野江は口をきいていない。
もっともっと最初のほうに教えてくれるべきだったんじゃなかったのか、とか、
……俺っていう存在があるのに、するりと消えることに抵抗はなかったのかな、とか。
 わかっている。彼が、そんな簡単な想いで俺に告げたわけではない、ということ。
でもやっぱりくるしくて、つらいのは、……俺がどうしようもなく野江が好きだから、ってだけで。
「はあ」
五度目、かな。それくらいになるため息がつくと同時に、携帯電話が震える。画面を見る。
野江祐介。意地でも話してこなかったのに、限界だったのか、自然と通話ボタンを押していた。
『もしもし』
「なんだよ」
『……冷たくね?』
「当たり前だろ、バカ」
声が震えた。多分、泣きそうになっているのだと思った。けれどもなけなしの自尊心がどうにか涙腺を引き締める。
『正直ね』
「うん」
『出てもらえないかと思った』
「……うん」
『俺さ、お前のこと好きだよ』
「んだよ。いきなり」
『言っておかなきゃいけない気がしたから』
いつになく鋭い声色に心が揺れる。会いたい。会いたい、会いたい、会いたい。
野江の黒い髪に触れたい、眼鏡越しの優しい瞳を見たい、あの優しい声をちゃんと、生で聞きたい。
「今から」
『ん?』
「お前の家、行く」
『……うん、おいで』
携帯を握る指先に力がこもる。視線をうつせば自然と目に入るカレンダー。
彼が俺の目の前からいなくなるまで、あと4日。
好きだよ、の想いを精一杯、ぶつけなくちゃ。