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騎士と傭兵

なあエスクワイヤ、俺の生き方はこうだ。
はした金貰っては人を殺して、勝っても負けても手前が死なねえ限りはまた次の戦場の次の戦争で次の人殺しをする。
腐れ外道の祖先から代々続く稼業の、染み付いた業や血の臭いは、そう簡単に消えたりしない。
だからなあ、違わず腐れ外道な俺は、刃向かうのなら赤ん坊だろうがガキだろうが構わず殺すよ。勿論、お前も。
だがまあ、俺の御主人サマがご所望なのは、テメェみてえな三下の命じゃねえ…っつーのは、わかってんだろ。
ほら、どけよエスクワイヤ。随分手こずらせてくれたじゃねえか。
怪我はかすり傷だな?じゃあとっとと逃げて、それで……あぁ?おい、何の冗談だ。
死ぬかもしれねえとんでもねえ劣勢の時、俺は泣き喚いたぜ。助けてくれ、死にたくねえ、ってな。周りもそうだった。祈って騒いで銃をぶっぱなして、命からがら生き延びた。
お前は生きたくねえのかよ?
あぁ、そうかい。なら俺が、今ここで、お前を殺すよ。
………なあ、ところでお前、俺に見覚え、ねえのかよ?

腰に仕込んだ短剣を、目の前の青年の心臓へと真っ直ぐ突き付ける。
避けようと彼が間合いを取ったその隙に、先程弾かれた長剣を拾い上げた。
まだ動ける。彼が言った通り、怪我はかすり傷だ。
だが、逃げる訳にはいかない。この男に私の御主君を追わせる訳にはいかないのだ。
私のマスターを殺したこの男に、私がどれだけ長く応戦出来るのかは、解らないけれど。

どうか、遠くまで逃げてほしい。そして、生きて欲しい。
充分すぎる程、幸せな命だった。
自らの信念とあの方達を守るためならば、死ぬ事は怖くない。
「貴様の顔に見覚えなどあるものか」
意図の解らぬ問い掛けを切り捨てて、私は剣を構える。

◆◇
彼は、私が幼少を過ごした生家の、生け垣をくぐって現れた。
私の世界を彩った四つ年上の秘密の友人は、ある日突然、私の前からいなくなった。途方も無い寂しさからか私は彼を努めて忘れようとした。
やがて七歳になり御主君に仕え始めた私は、自然とそれに成功した。
その事を、私はついに思い出す事はできなかったから。

霞む視界の中で青年が私の名を呼び、泣く理由を、私は知らない。